第16話 ガンナー
特殊クラス
フォースエターナルの特殊クラスの一つで、銃を武器に使いたいと思っている人向けの趣味職である。
強さを求めてこのクラスになってはいけない。
何故なら……糞弱いから。
能力的長所として挙げられるのは、ライフル装備時の射程がゲーム一という点のみ。
それ以外は――
低火力。
低耐久。
低速移動。
スキル燃費の悪さから来るガス欠。
――と、良い所なしである。
運営も初めから弱クラスとして設定していた様で、クラスチェンジ用のクエストが低レベルでこなせるのはその為である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「持って来たぜ。確認してくれ」
俺は今、魔弾ギルドにいる。
特殊クラスである
「うむ、見事だ」
テンガロンハットにマント姿をしているギルドマスター――カストルに集めたオークの牙を渡すと、彼は満足そうに頷く。
これでガンナーへの転職用クエストは終了である。
廃人である俺とした事が、集めるのに三日もかかってしまったぜ。
まあ今の装備と条件じゃ、これは仕方がない事だが。
因みに、オークの牙取集には特に大きな意味はない。
ガンナーとの関連性は取ってつけた様な薄味で、ただの運営の匙加減と断言できる。
まあクラスチェンジさえ出来るのなら、俺にはどうでもいい事だが。
廃人にとって重要なのは、過程ではなく結果だからな。
やったら転職できる。
それが全て。
「約束通り、君にこれを渡そう。女神様の力のこもったバッジだ」
転職アイテムは星型のバッチだ。
デザイン由来は保安官バッチ辺りだろうと思われる。
「あんがとさん」
カストルからバッチを受け取ると、自然と使い方が理解できた。
まあゲームと全く同じだ。
俺は早速転職すべくバッチを頭上へと掲げ、女神へと祈りを捧げる。
『あなたは魔弾士としての道を望みますか?』
パネルが現れ、俺に転職のイエスノーを訪ねて来る。
わざわざクエストをこなして手に入れているのに、しないって選択肢はない。
迷わず俺はイエスを選択する。
「あなたに
俺の脳内に女神の言葉が響き、頭上に羽が舞う転職のエフェクトが発生する。
これで俺も晴れてガンナー……
な訳は勿論ない。
当然これもキャンセルされているだろう。
何せ俺は初期クラス固定な訳だからな。
「一応ステータスを確認しとくか」
通常のクラスチェンジは、ステータスのボーナスがすべて手に入っている。
だが、特殊クラスもそうなるとは限らない
俺はステータスを意識――そうすると分かる――して、それを確認する。
【コモン】
名前:
LV:1
HP:562
SP:110
MP:103
筋力:20
速度:21
体力:14
魔力:18
器用:6
幸運:6
ステータスはちゃんと上がってるな。
上昇はHP・MP・SPと、筋力以外が2づつ。
筋力が上がらないのは、ガンナーの扱う魔銃が魔力依存の武器なためだ。
転職時に習得したスキルは【魔銃マスタリー】。
このマスタリーがあると、魔銃と呼ばれる銃型の武器が扱えるようになる。
まあ俺には初期武器縛りがあるので、攻撃手段には当然ならないが……
「取り敢えず、一番安いライフルだけでも買っとくか」
とは言え、使い道がない訳でもない。
射程を生かした釣り用になら、ダメージがなくとも十分有用だ。
釣りと言うのは、モンスターの敵意や意識を利用して引き寄せたり、そのまま引っ張り回す事を指すネット系ゲームの用語である。
その目的は――
1、遠くにいる敵を引き寄せ、接敵までの時間を減らして狩り効率を上げる。
2、特定の敵を上手く他の敵から引きはがし、狙った敵だけを倒す。
3、数を引っ張り回し、範囲攻撃で纏めて攻撃できるようにする。
――などだ。
まあ俺は範囲攻撃がないので、釣りをするなら1か2になる。
「さて……」
本来ならもうこのギルドに用は――ライフルは買うけど――ない。
だが立ち去る前に、確認しておく事があった。
それはクエストの再受託だ。
「マスター。ガンナーになるテスト受けたいんだけど?」
これはやり切りタイプのクエストなので、ゲームでは一回受けたらそこで終了となっている。
だが此処はゲーム世界だ。
ひょっとしたらと言う事もある。
だからその可能性を期待して、俺は駄目元でテストを再度申し込んでみた。
「ははは、一度合格している君にはもう必要ないだろう」
が、俺の期待はおっさんにバッサリと切り捨てられてしまう。
ちっ、やっぱ一回制のクエストは無理か。
女神像の半年スパン以外で無限強化するには、ドロップ系の転職アイテムを集めるしかないみたいだな。
特殊クラスは、クエストで転職アイテムを貰えるタイプが大半だ。
だがごく一部のクラスは、モンスターからのドロップで手に入るアイテムで転職する事が出来た。
――但し、それらの入手難度は高めとなっている。
比較的入周難度が低い物でも、レベル200代のソロ狩場での極低確率入手だったり、
レベル100後半でパーティーを組んで倒すレイドボスだったりだ。
今の俺では、全く手が出ないレベルと言っていい。
「まあ地道に取れそうな特殊クラスのボーナスを回収しつつ、装備強化していくしかないか……」
とは言え、今の能力で次の特殊クエストに取り掛かるのは少々厳しいので、女神による転職待ちになる。
まあ暫くは、無心でエーリルのレベル上げに励むとしよう。
「やれやれ、先は長いぜ……」
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