概要
変わり映えのしない毎日に、人生に、響は嫌気が差していた。ある日、いつものように憂鬱とした気持ちでホームで電車を待っていると、目の前を通り過ぎた一人の少女が電車に飛び込もうとしていた。響は咄嗟に彼女の命を救い、二人は同じ高校だったということもあり、次第に心が惹かれていく。
だが、彼女には秘密があった。
そして夢があった。
「__私はくらげになりたいから」
波の狭間に声を落とすように、彼女はそう口にした。
これは、響と彼女、そして響の友人二人が紡ぐひとなつの命の物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!泡のような煌めきと深海が溶け合う、言葉にならない余韻と響きを与える物語
読者一人ひとりを物語の世界へ誘う文章や描写力が素晴らしく、自分自身が響たちと同じ高校生になったような気持ちで没入させていただきました。夏の季節感、高校生というときにしか味わえない青春の煌めきと切なさが胸の深いところを打ち続ける美しい物語です。
生と死という重みと深みのある内容でありながら、堅苦しい表現は一切なく、あまりにも自然に読者を物語へ惹き込みます。文章の表現と流れるようなリズムが本当に魅力的で、深海さまの登場人物や読者に対する深い想いを一文一文から強く感じました。だからこそこれからも、たくさんの読者さまに愛され続ける物語になると実感すると共に感動しています。
一人ひとり考え方…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しい言葉で綴られた、かけがえのない一瞬のきらめき
物語も文章も、登場人物それぞれの思いも、どれを取ってもすべてが美しい。4人の高校生が織りなすひと夏の青春が、とても繊細なタッチで描かれています。
彼らの過ごす時間とその風景は、まるで水彩画のようなみずみずしさと、同時に脆く溶けてしまいそうな儚さを滲ませていて、それが全編を通してこちらの心にも沁み込んでくるようです。
命という大きな課題に対し、登場人物それぞれの思いを深く掘り下げ、ひとつの選択へと導かれるストーリー。その言葉の端々には命について考え抜かれた真摯な姿勢を感じます。
たったひと夏のあいだに彼らの経験する思いは、おそらく一生のあいだに味わう感情を凝縮したように濃く、切ないです。そのな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!感動に涙する青春の物語です。書籍化/実写映像化希望!
深海さんが22年12月に掲載した作品ですが、本当に素晴らしい。
タイトル、ストーリー、描写、どれも一級品です。青春のせつない物語で、若い方にはぜひ読んで欲しいですし、年配の作家さん達も一度読まれることをお勧めします。特に描写が素晴らしい回が幾つもあり、目を見張ります。さらに最後の数話は本当に感動しますので最後まで読まれることをお勧めします。私は小坂流加さんの『余命10年』に匹敵する名作だと思います。
実に30人もの方が絶賛のレビューをしておりますので、まずはそちらだけでも眺めてみてください。一部を参照させていただきますと、下記の通りです。
「言語化できない感情の波に攫われていく本当に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青春も初恋も、命の儚さも未来への光も、すべてを知ったひと夏。
電車に飛び込もうとした少女を救ったそのときから、憂鬱だった響の人生は色づきはじめる。
どこか儚げな少女、海月。
まっすぐで鈍感な響。
底抜けに明るい親友の拓馬と静香。
四人が紡ぐ青春の一瞬一瞬は、きっと一生忘れられない。
初々しい高校生の恋と、「命」という重いテーマのアンバランスが作り出す、不安定に震える彼らの心情が魅力。
これだけ一緒に居るのにまだどこかわかり合えない。たくさん言葉を重ねても、まだ相手が見えない。気づいたときにはもう遅くて、焦って、でも全力で互いを信じ続ける。
不安定さと表裏一体の彼らの強さに圧倒されました。
作者の深海かやさんの魅力である美しくダイナミックで、ワンシー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それでも未来は掬われた――少年の日常と少女の非日常の邂逅の、その先。
一人の少女が電車に飛び込む。その腕を、掴む。少女は涙を浮かべてお礼を告げた。
彼女が知る由もない、ある言葉を口にして。
この、駅のホームで始まる少年の日常と少女の非日常の邂逅――を目にした時、私は思わずパタリとページを閉じました。「じっくりと読もう」
例えば店先で覗いたページをすぐさま閉じて、家に持ち帰るように。
そうして彼らと同じように、かけがえのない一夏の時間を味わうようにゆっくりと読み進めました。
プロローグから予感する儚さ。挿し込まれる日記に秘められた心中。
少年・響と二人の学友と、少女・海月。この四人が紡いだ一夏は、幸せで、だからこそ切ない、人生の瞬きでした。――決して忘れるこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!わたしはくらげになりたいから。淡い色彩の中紡がれる青春。
くらげのように、ふわふわとした読後感だと思いました。
絶望や、やるせなさもある。
それなのに、高校生4人の日々はきらきらと輝いて眩しい。それだけでなく、4人が常に美しい風景、色彩の中にいるのがとても印象的でした。それぐらい情景描写がとても素敵なのです。
基本的には響の視点で描かれていくのですが、途中で誰かの日記が挟み込まれ物語を読む手が止まらなくなります。読者を引き込む構成も素晴らしいです。
この取り止めのない感情、何かに似ているな……と考えていたらそれが「人生」なのだと気がついたのは随分後になってからでした。
この物語には人生の喜びも悲しみもドキドキも……全てが詰まっている。そんな気が…続きを読む