概要
変わり映えのしない毎日に、人生に、響は嫌気が差していた。ある日、いつものように憂鬱とした気持ちでホームで電車を待っていると、目の前を通り過ぎた一人の少女が電車に飛び込もうとしていた。響は咄嗟に彼女の命を救い、二人は同じ高校だったということもあり、次第に心が惹かれていく。
だが、彼女には秘密があった。
そして夢があった。
「__私はくらげになりたいから」
波の狭間に声を落とすように、彼女はそう口にした。
これは、響と彼女、そして響の友人二人が紡ぐひとなつの命の物語。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!青春も初恋も、命の儚さも未来への光も、すべてを知ったひと夏。
電車に飛び込もうとした少女を救ったそのときから、憂鬱だった響の人生は色づきはじめる。
どこか儚げな少女、海月。
まっすぐで鈍感な響。
底抜けに明るい親友の拓馬と静香。
四人が紡ぐ青春の一瞬一瞬は、きっと一生忘れられない。
初々しい高校生の恋と、「命」という重いテーマのアンバランスが作り出す、不安定に震える彼らの心情が魅力。
これだけ一緒に居るのにまだどこかわかり合えない。たくさん言葉を重ねても、まだ相手が見えない。気づいたときにはもう遅くて、焦って、でも全力で互いを信じ続ける。
不安定さと表裏一体の彼らの強さに圧倒されました。
作者の深海かやさんの魅力である美しくダイナミックで、ワンシー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それでも未来は掬われた――少年の日常と少女の非日常の邂逅の、その先。
一人の少女が電車に飛び込む。その腕を、掴む。少女は涙を浮かべてお礼を告げた。
彼女が知る由もない、ある言葉を口にして。
この、駅のホームで始まる少年の日常と少女の非日常の邂逅――を目にした時、私は思わずパタリとページを閉じました。「じっくりと読もう」
例えば店先で覗いたページをすぐさま閉じて、家に持ち帰るように。
そうして彼らと同じように、かけがえのない一夏の時間を味わうようにゆっくりと読み進めました。
プロローグから予感する儚さ。挿し込まれる日記に秘められた心中。
少年・響と二人の学友と、少女・海月。この四人が紡いだ一夏は、幸せで、だからこそ切ない、人生の瞬きでした。――決して忘れるこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!わたしはくらげになりたいから。淡い色彩の中紡がれる青春。
くらげのように、ふわふわとした読後感だと思いました。
絶望や、やるせなさもある。
それなのに、高校生4人の日々はきらきらと輝いて眩しい。それだけでなく、4人が常に美しい風景、色彩の中にいるのがとても印象的でした。それぐらい情景描写がとても素敵なのです。
基本的には響の視点で描かれていくのですが、途中で誰かの日記が挟み込まれ物語を読む手が止まらなくなります。読者を引き込む構成も素晴らしいです。
この取り止めのない感情、何かに似ているな……と考えていたらそれが「人生」なのだと気がついたのは随分後になってからでした。
この物語には人生の喜びも悲しみもドキドキも……全てが詰まっている。そんな気が…続きを読む - ★★★ Excellent!!!君に、出逢えて良かった。
冒頭を読めば、これから語られる物語が切ないものであることを想像できるでしょう。これは、くらげになりたいと願う少女と、彼女と友達になった少年少女たちの、切なくも瑞々しさが感じられる物語です。
情景描写が丁寧で、自身がその場で彼らと共にいるような感覚を味わえました。自然と光景が目に浮かぶのです。その世界が立てた音ひとつで、自分の中にある懐かしい頃に引き戻される感覚は、とても面白いものでした。
響が駅のホームで出逢う少女、海月。そんな彼女と友情を育んでいく響たち。
四人組の彼らが体験したかけがえのない時間を共有できたことは、とても感慨深いものでした。
彼らは純粋で、柔軟性があって、透明なキラ…続きを読む