青春も初恋も、命の儚さも未来への光も、すべてを知ったひと夏。

電車に飛び込もうとした少女を救ったそのときから、憂鬱だった響の人生は色づきはじめる。
どこか儚げな少女、海月。
まっすぐで鈍感な響。
底抜けに明るい親友の拓馬と静香。
四人が紡ぐ青春の一瞬一瞬は、きっと一生忘れられない。

初々しい高校生の恋と、「命」という重いテーマのアンバランスが作り出す、不安定に震える彼らの心情が魅力。
これだけ一緒に居るのにまだどこかわかり合えない。たくさん言葉を重ねても、まだ相手が見えない。気づいたときにはもう遅くて、焦って、でも全力で互いを信じ続ける。
不安定さと表裏一体の彼らの強さに圧倒されました。

作者の深海かやさんの魅力である美しくダイナミックで、ワンシーンを焼き付けるような情景描写が効いています。
とにかくきれいな作品。
最後には切ないような、満ち足りたような気持ちとともに、晴れ晴れとした瑠璃色が余韻として残ります。

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