悲しくて苦しくても決して後悔はしない。貴女と歩んだ時間が愛おしいから…
- ★★★ Excellent!!!
昨日に似た日が、今日も明日も始まってしまう。変わり映えのしない日々に、響はある少女と出会う。それは、駅のホームで電車を待っている時に、起こった出来事だった。
謎の多い少女——。冬村海月と大橋響のひと夏の恋物語と、それを支える仲間達(静香と拓馬)の友情の物語。
プロローグにて、驚きの展開が始まって行くが、実は過去を振り返るような作風で物語は動いていく——。
「私はくらげになりたい……」と言った海月。そして彼女の本心は? 彼女は自分の望む、くらげになれたのだろうか?……。
誰にも話せない海月の置かれた立場。読む事に苦しさが伝わってきます。
抗える事の出来ない苦しみと葛藤。絶望の中で見たものは一握りの希望だった。
揺れる淡い恋心と現実の厳しさ。喪失感から前を向く救いの手は来るのだろうか。
切なくも儚く、それでいて透明感のある美しく洗礼された文章は、読者を物語に一気に引き込んでいきます。背景描写も心理描写も素晴らしく、まるで映像を観ているかのようです。
どうしても救われない運命に抗いながらも、救いを求める彼等の思いは、読む者を捉えて離さないでしょう。
泣きたい夜に、読みたいこの物語——。読めば必ず、心が震えます。