碧き瞳と紅の唇。惹かれ合う二人の運命は紅蓮の炎と陽光と共にループする。

 戦国大名・織田信長の妹「お市の方」とヴァンパイア「ジョエル・ロイド」がタイムスリップを繰り返し、再び巡り会う摩訶不思議な物語。

 日本の現代社会と過去の戦国時代。そして十二世紀のヨーロッパからの複雑怪奇なタイムスリップから起こる数奇な運命とは……。
 それはSF。それはホラー。それは歴史物。そしてミステリーであったり……。

 ファンタジーならではの恋愛要素を織り交ぜながら、ミステリーのような謎解きも有ります。
 切ない場面も幾つもあり、なるほどなと納得する伏線も回収する作者様の実力には毎度ながら驚かされます。

 過去と現在。そして過去と未来。幾度となく繰り返される時間軸の繋がりの中に上手く織り交ぜられた感情表現も中々の腕前。
 それぞれの時代に生まれる感情は、戸惑い。葛藤。嫉妬。疑惑。熱情。ハラハラ・ドキドキさせられる心理描写の上手さには、もはや脱帽に値します。

 ヴァンパイアと戦国時代の美女。この二人のラブロマンスの結末はバッドエンドなのか?ハッピーエンドなのか? 

 エピローグに語られる内容は読み手を唸らせるどんでん返し。やはりこれは純愛物語。

 読後に温かい拍手を送りたい。と思うような余韻の残る一作ですよ。



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