SFで科学要素が有りながらも、剣と魔法の異世界ファンタジーが融合する物語。
悪魔の生体兵器966が目覚めた世界は、剣と魔法の存在する世界だった。
科学的な視点から、この世界観をデーター取りする966。
この地で出会ったデハーニに966は自らの名をクロムと名乗った。自らをクロムと名付けてから、彼の中で何かが少しづつ変わり始める。
ゴブリンやサイクロプスやオーガを圧巻の強さで蹂躙するクロム。その戦闘を見た人々は恐怖のあまり恐れ慄くのであった。
やがて出会った乙女達のウィルゴ・クラーワ騎士団・団長ピエリス。副団長・ウィオラとべリス。
クロムと出会って彼女達の生き様が大きく変わっていく。
この物語の設定は細かく、卓越した心理描写も背景描写も素晴らしいです。
息詰まる戦いの場面では、まるで映像が浮かぶかのよう。
次から次へとスリリングな展開は予想が全くつかない。
心の葛藤もあり、ヒューマンドラマに人の繋がりが読み手の胸を熱くさせる。
読み始めたら止まらないほどメチャクチャ面白い。科学と魔法の融合の世界。
新しいファンタジーの世界が此処にあります。是非とも映像化してほしい。
重厚な描写力によって描かれる、異次元のパワー。もう、目が離せない嵐の様なSFファンタジー。
もう誰も黒騎士クロムを止める事は出来ない――。
SFファンタジーと聞くと思い浮かぶのは「スターオーシャン」ですが、本作はそれよりも圧倒的に渋い、重く固い鉄を感じさせる作品です。
未知との遭遇、そして交流を通じて、兵器に過ぎなかったものが己の過去の記憶を呼び起こし、自我と呼べるものを獲得するのですが……この流れが実によい!
目の前の対象をノータイムで「助けるべき対象」と判断しない点や、その後慎重にどう対処すべきかを分析し行動していく点が、実に「お約束部分に甘えない、実直な作品」という印象を与えてくれます。
こういった未知との遭遇の反応を実によく描いた作品にR.A.サルバトーレ著の「ダークエルフ物語」があるのですが、まさにその作品の面影を感じました。
実にじっくり、じわじわと、ゆっくり味わう事で良さが滲み出てくる作品です。
すごく簡潔に言うと、SFの設定とキャラを異世界にブチ込んだ転移モノです。
ひとこと紹介にも書きましたが、SFの世界観で異世界を見たら(体験したら)こうなるんだ、というのを実現させた稀有な作品です。
序盤は会話がほとんど無くて、地の文が主体なのですが、私好みの硬質でありながら読みやすい文体で、するすると物語に引き込まれます。
またSFには必須である設定の説明についても、一度に与える情報量の加減が巧みで、物語の進行を妨げません。
そして何よりも、主人公である966のカッコよさに痺れます。序盤の一体のモンスターとの戦いだけで、その魅力は存分に描かれており、これからどんな敵と戦うのだろうとワクワクさせられます。
久々に、読んだ瞬間に名作だとわかる作品に出会いました。
SF好きも異世界好きも楽しめる名作だと思います。
皆様も是非どうぞ。