第25話 helper : 難破船と助け船
「まぁ、そこは後にしてですね‥‥とにかく
ミナトさんの安否です」
『え‥‥?』
「どこか悪い所はありませんか?」
『はい‥‥特には何も、健康です‥‥あでも!』
「でも‥‥?」
『僕、得体の知れない果実を食べちゃった
んですけど‥‥何かツルツルしてて細長くて
若干緑っぽい色の‥‥』
「ん? あぁ‥‥そうですか、どんな味で?」
『何か酸味があって、フルーティーでした
けど‥‥凄い辛くて凄い不味かったです‥‥!』
この学生寮で助けて貰うより前。この世界に来て数時間の頃に、飢えに負けて口にしてしまったあの果実。
あの時の
「あそう、気持ち悪いとかは無いですか?」
『え、はい。クソ不味かっただけです‥‥。』
本当にどうでもいいことだったけども、あまりに印象的でだったものだから‥‥。
あんなもの初めて食べたよ‥‥。
「あ‥‥お前もしかして、タイワキンカンの事
言ってる?」
『何ですかそれ‥‥?』
リグフト君が僕の果実失敗談に言及する。
「あれだろ? 木に成ってるやつ。先っぽ
オレンジっぽくなかった?」
『あっそうそう!! それだと思います!』
「あぁミナト君‥‥たぶんそれ熟してない‥‥」
「しかも加熱してませんしね‥‥」
ラインク君もツルナ君も付け加えてくる。
『うそ‥‥! あれ熟してなかった‥‥!?
じゃあ僕、青いトマト食べてた的な!?』
「はは笑 タイワ地域だと結構メジャーな
果実なんですけどね、知らないですか?」
『はい‥‥初めて知りました‥‥。』
「なるほど、この地方出身じゃないですか」
『そう‥‥ですね‥‥はは』
「それをアリアスさんは別の世界なんて言っ
てたんですね」
『あいや、それは‥‥!』
どうしよう‥‥! ここで都合良く言い訳しとかないとダメか? それとも別の世界から来たと貫き通すか‥‥!
「それが先生‥‥! 彼、色々とおかしいん
ですよ‥‥」
「そ、そうなんですよ! 本人の前で言う
のはアレなんすけど‥‥魔法を聞いたことも
使ったこともないとか‥‥」
「えぇ? そんなはず無いでしょう、義務
教育で小学校である程度はやるでしょう?」
『いえ‥‥本当、何ですか? まさか本当に
あの魔法‥‥なんて』
苦笑いで問いかけたが、みんなあまりに真剣な表情だから困ってしまう。
「更にはですよ! ミナトさんは魔法紋章
を解読できるかも知れないのです! ねぇ?
ミナトさん!! 試しに先生のも診てみて
ください!」
『え‥‥?』
「先生、少し紋章を見せて貰ってもいいで
しょうか?」
「あぁ、はい」
すると男の人は、首の裏辺りを見せてきた。
『えっ‥‥? 文字が‥‥!』
男の人の左の首裏から左肩にかけて、紛れもない〝dyeing〟の文字が。
「どうですかミナトさん‥‥!」
『ち、ちょっと待ってください‥‥』
ツルナ君に期待の目を向けられ、僕は受験期の記憶を辿って、単語帳のページをぺらぺらとめくる。
『ing形だよね‥‥あぁ染める‥‥とか?』
「‥‥!?」
見つめていた男の人の体が少し動く。
「おやぁ‥‥ちょっと要らない紙あります?」
Read もやしずむ @moyasing
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