第14話 perceive : そろそろの自覚を




 「つーわけで‥‥」


 『はい‥‥‥‥』



 やや湿り気を持つ、くしゃっとした髪。

 肩にタオルを掛けて僕らは向き合っていた。



 「洗いざらい話して貰うぞ‥‥」


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ゴクリ』








 「てかサクリ、お前課題終わった‥‥?」

 「あぁ‥‥今日の魔法陣の穴埋めだろう?」

 「頼む! ちょっと写させてく‥‥‥‥」


 「っ‥‥お前らやる気あんのか!」


 「うぁ? やる気も何もなぁ‥‥」

 

 「てか何でお前らが居んだよ!」


 「何って‥‥ミナト君のお話かと思っていたん

 だけれどね」


 「あぁそうだよ! お前らもちょっとは責

 任をだな‥‥!」

 

 「まぁまぁ、リグフトお前めっちゃ焦って

 るじゃんw」


 「もぉぁァ! その通りだわ‥‥」


 『‥‥‥‥‥‥‥。』



 本当に、何でラインク君とサクリ君も居るんだよ。

 でも確かにね、助けて貰っておいてなんだけど、リグフトさんは凄く焦ってると思う、凄く。



 「ふはァ~、じゃあ僕は明日早いから寝る

 よ‥‥」

 「ああっ、サクリ! 帰りに課題貸して!」


 「おいちょッ! 待てお前ら‥‥」



   バタン‥‥






 「『えぇ~ぇ‥‥‥‥?』」

 


 切り捨てるように閉まる部屋の扉。

 二人して呆れた顔をして、空いた口は塞がらないままである。



 「まぁ、いいや‥‥取り敢えず聞くぞ‥‥。

 今度は逃げられねぇからなー」


 『うっ‥‥ぐうッ‥‥!』



 しかめっ面で両手を組んで、胡座あぐらをかく彼の姿はガンコ親父とでも言おうか。

 てかやばい、どう言おう‥‥!



 「さぁ‥‥言ってみてくれ‥‥」


 『うぇ‥‥っと‥‥』



 どうしよ! どうしよ!!

 もうこの際正直に言ってしまうか‥‥? いや

ダメだ、そんな事言ったら頭おかしい奴だと思われて追い出されるかも‥‥!



 「何だよ‥‥言えないってか‥‥?」


 『うっ‥‥!』



 やべぇ何か言わんと‥‥!

 いや、待てよ‥‥!?



 『これだ‥‥!』


 「あ?」



 窮地の僕の頭の中に、1つの思考が流れ込む。この世界に来てから、肌身離さず持ち歩いていたこの単語帳。そして、ラインク君の言っていた事‥‥。

 彼の腕にはlinkの文字がはっきりと刻印されていた。そして、僕もこの世界に来たと同時に

腕にreadの文字が‥‥。

 よし‥‥こうなったらもう正直に‥‥!



 『ぼっ、僕は!』


 「お、おうおう‥‥」


 『この世界の者じゃ‥‥ないんです‥‥!』


 「はぁ~? まだ言って‥‥」


 『僕はラインク君の腕の文字が読めるんです

 よ‥‥!』

 

 「いや、あれは文字じゃなくてあいつの魔

 法紋章だぞ?」


 『何だそれ‥‥じゃなくて! ホラ! これ

 でしょう?』


 「ッ!? お前これ‥‥!」



 僕は単語帳のページをペラペラとめくり、linkの意味合いが記されたページを見せた。

 この英単語はメジャーな方だから、僕の中では当たり前のように記憶されていた。

 今の僕の境遇を証明するには‥‥こうするしかないだろう。



 『ラインク君の腕にある文字はこれでしょ

 う?』


 「お前‥‥その魔導書‥‥!」


 『ラインク君だけじゃない、きっと他の人

 のも分かります‥‥! それに‥‥』


 

 僕は借りている服の袖をまくり、腕のreadの文字と共に、単語帳の方もreadのページを

開いた。



 『僕自身の文字だって分かります‥‥!

 これなら、信じれますか‥‥?』


 「お、お前っ‥‥‥‥一体何者なんだよ‥‥!」

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