第15話 shows : 君の見せてくれた魔法



 

 『何‥‥者と言われても‥‥ただの卒業間近の中

 学三年生です‥‥ね。』


 「えっ‥‥あ、お前中3? どうりで‥‥どっか

 の制服着てるし、背も同じくらいだったし」


 『そうですそうです!』


 「ンじゃなくてだな!! そんなちょっと珍

 しいぐらいの魔導書見せられたからって、他

 の世界から来たとか信じられるか!」


 『なァァッ!? そこを何とか!!』


 「何とかじゃなくて!!」


 『何でェッ! というかさっきからずっと

 魔導書って何なんです!?』


 「あぁ? もう中3の奴が知らんとか無い

 だろ、俺も持ってるし‥‥」



 そういった彼は自分の机の棚から、一冊の本を取り出して見せてくれた。

 その本は、なんだか洋書みたいなロマンチック溢れる本だった。

 彼はその本を開きつつ、話し出す。



 「これも別にそんな珍しいモンじゃないし、

 俺も魔法すげぇ得意って訳でもないんだけ

 どな‥‥」



 開かれその本の中身は、5歳児が書いたみたいなぐちゃぐちゃの文字やら模様が描かれていて、怪しさをかもし出している。



 「あ、そうだお前‥‥! さっき腕に紋章あっ

 たよな、どんな魔法使えんの?」


 『はい?』


 「あ、もしかしてまだ分からん?」


 

 さっきから魔法だの何だの、もしかしてこの人ヤバい人‥‥?



 「俺は紋章無いからなー、羨ましっ」


 『この腕の文字‥‥この世界じゃ紋章って言

 うんですね‥‥』


 「‥‥‥‥‥‥‥‥お前、もしかして言えないよう

 な経験あった? もしそうなら、ゴメン‥‥」


 『あ、いや! 違くて!』


 「じ、じゃあさ、お前魔法を見たことも使っ

 たことも無いって言うの?」


 『ま、魔法? そんなの使えたら苦労しない

 でしょ‥‥リグフトさんも僕と同レべルでヘン

 な事言いますね‥‥』


 「なんか馬鹿にしてる‥‥? まぁいいや一回

 見といて」


 『‥‥‥‥え?』

 


 彼はあの奇妙な本を開いて片手で持ち、独り言のようにボソボソと口を開いた。

 うわ、マジでヤバいじゃんこの人。



 「其の力よ、光の雫を授けろ」


 『何言って‥‥』



 次の瞬間、彼はもう片方の手を握りしめ、ゆっくりと開いていく。

 同時に僕は目を疑った。彼の握った手の隙間からは、差し込むように光が溢れている。



 『は!? え、どゆこと!?』


 「ホラ、どう?」



 彼は掌を見せて、その光をあらわにした。

 まるで電球がそこに在るように、彼の掌の中できらきらと光り輝くものがあったのだ。



 『どうじゃなくて! 何コレ!?』


 「あ、やべ消える‥‥」



 僕が目を疑っている内に、その光はすぅとその輝きを失って跡も無くなっていた。

 ど、どういう訳だ!? 手の込んだマジックなのか‥‥!

 キョロキョロと彼の周りを観察したが、タネも仕掛けもござらなかった。

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