第16話 turn : この世の曲がった常識と






 「いや~ちょっと粘りが落ちたな‥‥」


 『な、何すか今の!?』


 「え、いや発光する系の魔法だけど。」


 『どんな仕掛けで!?』


 「いや、仕掛けも何も‥‥ただの魔法だろ。」


 『はっ‥‥はァ!? いやいや無い無い!』


 「いや見ただろ! 有るよ!!」



 いやいやいや、そうは言っても信じられないでしょうが!

 何だ? 彼の言う魔法ってのは手品の事なのか!?



 「お前も何かやれよ、そんな大層な魔導書

 持ってるんだし」


 『なっ‥‥! 僕は手品なんて出来ないです』


 「はぁ‥‥? お前いつまでとぼけてんだよ‥‥い

 い加減にし‥‥」



   コンコンコン‥‥



 「ん? 誰だろ?」



 僕が混乱して焦っているのも気にせず、突然のノックにリグフト君は部屋のドアを開けた。


  

 「おや? これはミナトさんじゃあありませ

 んか!」


 『はっ、はい?』


 「おん、ちょっと事情聴取中で‥‥」


 

 部屋に入って来たのは、僕と同じかそれより少し小さいくらいの背丈の、メガネの男の子だった。

 そうか‥‥ここは学生寮だから、リグフト君の知り合いも居るわけだ。



 「いやはや! ちょうど探していたんです

 よ、珍しい魔導書をお持ちだと、ラインク

 君から聞きまして‥‥!」

 

 「え、あいつ余計な事言いふらしてんな‥‥

 確かにコイツのは珍しかったけど‥‥」



 誰だこの子は‥‥? 図鑑とか読み込んでる物知り博士みたいな子だな、興味津々でぐいぐい来るタイプなのかな。



 「是非とも! 一度拝見させて頂けません

 か!」


 『まぁ‥‥英単語帳くらいなら‥‥』


 「おぉお!! ありがとうございます!

 それでは‥‥」


 「何なんだよそのエイタン‥‥何とかって‥‥」



 時間経過で乾ききった髪をくしゃくしゃと掻くリグフト君を置いて、僕はメガネの男の子に英単語帳を貸し出した。

 んな珍しいもんかね、これは。



 「おおぉ‥‥これは面白いですねぇ‥‥!

 恐らく魔法紋章らしきものが数多に記されい

 ます‥‥」


 「おん、だよなこれ。紋章っぽいよな」


 『だから紋章って‥‥』

 

 「おや? ミナトさんはご存知無い?

 そうですか、じゃ僕のをお見せしましょう」

 

 『えぇ?』



 メガネの子は右腕を上まで捲り、予防接種の注射を打つ所らへんを見せてくる。

 うわ‥‥この子の腕にも何か文字が‥‥。



 『んん‥‥? turn‥‥? ターン‥‥?』


 「どうですか僕の紋章、ついでに固有魔法

 もお見せしましょう!」



 この子も魔法とか言ってる‥‥!?

 そう言えばここに来た時、サクリ君が魔法科の学校だとか言ってたな‥‥。

 ハッ! もしかして手品専門学校なの!?

 だから、もしかすると得意な手品の種類というか種目を体に書いてるとか!?



 「んいきますよォ‥‥!」



 そのままメガネの子は近くのノートを手に取って、見やすく机のど真ん中に置いた。

 いや、流石に手品科はぶっとび過ぎかな‥‥。

 でも、だとしたらこの子は‥‥

 


 『turn‥‥だから曲げる‥‥とか?』


 「「えェ?」」


 『うえぁっ!?』



 彼らが惚けた声を上げたと同時に、メガネの子が向き合っていた机の上のノートが、何も力を加えていないのにも関わらず、半分くらい上に向かってぐにゅつと曲がる。



 『うわっマジじゃん‥‥凄いなぁ‥‥。どんな

 仕掛けなんだよ‥‥!?』


 「えっ‥‥ええぇ、ナゼご存知ぃ‥‥?」


 「お前‥‥勘? だよな‥‥?」

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