第12話 wondered:僕も貴方も不思議そう



 「ん〜やっぱいつ食ってもうまい!」


 「いや、多分俺ら数えるくらいしか食ってな

 いだろ」


 『‥‥‥‥‥‥。』


 「ミナト君食わねぇの?」


 『あっ、いや‥‥』



 ラインク君に言われ、

 カツ‥‥カツン‥‥と、周りの皿とスプーンのぶつかり合う音に、僕も同じようにスプーンを手に取った。

 眼前に置かれる、暖かそうに湯気を漂わせて皿に鎮座するこれは‥‥なんだろう。

 銀色の皿の上に乗せられた白い米、その上に覆う形で被さる茶色のルウ、そしてその海原に浮かぶように置かれた野菜やら肉やらの具材たち。これは‥‥カレーなのだろうか?

 ひとすくいし目の前にすれば、立ちのぼる湯気がスパイスの香ばしい匂いを鼻に運ぶ。

  


 『いただきまーす‥‥』



 堪らず、掬い上げたそのまとまりを口に運ぶ。

 スパイスの香りは、咀嚼することでまた違った顔をして鼻を抜けていった。

 


  カツ‥‥カツン‥‥カツッ‥‥カツ‥‥!



 一つ、また一つと掬っては、スプーンを口に運んでいく。

 そのスピードはみるみる増していき、自分で言うのも何だけれどバケツリレーの様‥‥。



 「あぁなんだ、全然食うじゃん」


 「おぉ早いって、詰まるぞ?」


 『う"ぶッ! ヌッ"ぐッゴホッ"』


 「アッハハハwww」

 

 「ほら言わんこっちゃないwww」


 『ゲホ‥‥グッ‥!』



 米が詰まったのか、喉奥らへんの入っちゃいかん所に潤った感覚が追加され、反射的にむせてしまった。

 人が苦しんでいるのにバカ笑いしてくるとはなんだよ‥‥。

 若干イラつきながらも透明なコップの水をがぶ飲みし、なんとか立て直す。



 「フハハハッww 米吹っ飛んどるww」


 「な、何してんのお前ww」


 『ご、ごべん‥‥!』


 

 うぅん‥‥それは‥‥ごめん汚かった。

 嘲られるって‥‥こういうことか。



 「あ、そうだリグフトお前魔力値どんくら

 いだった?」


 「あ? えーとね、43くらいか。」

 

 「うわっ惜しーッ! 俺41だったわ!」

 

 「ウェェェーイぃ! やったぜぇ~!」


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』



 話しについていけてない疎外感、何の話しなんだろうか。

 


 「いやぁでも俺43だけどさぁ、どのへんな

 んだろ」


 「わからんな、まぁでも真ん中くらいじゃね

 ぇの?」


 「まぁな、まだ入学して1ヶ月経った‥‥かぐ

 らいだし、周りがどんなもんか分からんし」


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』



 入学‥‥! そうかここは学校寮の一部か。

 なんだっけ? たい‥‥なんとか高校? ‥‥高校!?


 

 「なぁ~、まだ知らん人いっぱいおるわ」


 「確かに、まぁそのうちでしょ」


 「そうだよな‥‥あ、そうそう! ミナト君

 さぁ、その魔道書っぽいやつなんなの?

 何系魔法?」


 『‥‥‥‥‥‥‥ハイッ!? あぁえっと‥‥!』



 急に思わぬ話しの振り方でテンパったけど、

ラインク君がこっちを向いて話しかけた。ちょっと何言ってるかさっぱりだけど。 

 ついでに机の上に置いた僕の英単語帳を指差している。



 「あぁそれ俺も気になってたわ」


 

 リグフト君も口を連ねて聞いてくる、そんなに面白いものじゃないと思うけど‥‥。

 


 『あぁこれ‥‥ただの英単語帳ですよ。

 でもだいぶ大きいんですよ‥‥ハハ‥‥』


 「は? 何て? エイタンゴチョー?」


 「なにそれ?」


 『え、いやだから、普通の英単語帳です』



 二人ともキョトンとするもんだから、中を開いて見せてみた。

 exam 、fluent 、adolescentやら英単語たちが顔を見せる。



 「うわっ! 何これめっちゃある!」


 「おぉ! え? でも呪文じゃなくね、どっ

 ちかと言うと紋章?」


 『え‥‥? どゆこと‥‥?』


 「うぇぇ~! 珍しいなぁ、すごいの持って

 んね」


 「俺も見たことないわ‥‥」


 『えぇ‥‥‥?』

 


 珍しげに二人は英単語帳を見つめるが、見たことないは無くないか? 仮にも高校生なんだろうに、受験勉強とかで使ったりしなかったろうか。

 僕もなんとか第一志望の高校に合格出来たから良かったけど、この英単語帳で頑張ったぞ!



 「ちょ、また後で話そうぜ、次風呂行かんと

 ヤバい」


 「あぁもう? 行くかぁ~、ほらミナト君付

 いてきな」


 『えあっ!? ハイ!』


 

 えぇ? 風呂‥‥に行くのか‥‥?

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