第18話 curiosity : 君が手を引くその理由
「お、お前ら!? 待て待てッ!!」
『ち、ちょっとぉ!? なになに!!』
「すみません! 少し付いてきて貰います
よ!!」
メガネの子にがしっと鷲掴みにされた手を引かれ、やや強引にも寮の廊下をドタドタと進んでいく。
横目に見える窓の外はもう夜の暗がりを帯びて、生い茂る木々がシルエットのように黒く目に映っていた。
「ミナトさん! 魔導書もそうですが、とて
も面白いですねぇ、あなたは!!」
「バカ! お前ら止まれ! もう消灯なんだ
よ、うるさァい!!」
ドタバタと不安定な足取りで廊下を走り抜ける僕らの後ろで、リグフト君のちょいギレかつ焦った声が響いている。
もう夜中だろうに、下の階とかに響いていたらどうしようか‥‥。
「なんか揺れてね?」
「地震だろうかね」
「オイ、不謹慎だよ」
「なーんかうるさいわね‥‥」
「まぁここ男子寮だしね‥‥」
「玄関なのにうるさいってどういうこと!」
「私も混ざるー!」
「ちょっと、アリアス!?」
「おーい寮長? あ、じゃない委員長?」
「どっちでもいいよ‥‥今日疲れたからもう
寝かせてくれよ」
「俺らだって寝ようと思ったンだけどさ‥‥
なんか落ち着かなくね‥‥」
「えぇ~? 知らないよ‥‥そんなの」
「あかんw こいつもう落ちるわw」
『ううぅ~っ‥‥ごめんなさい寮のみんな‥‥』
「もう少しですからお付き合い下さいッ!」
なんか、不特定多数の誰かからの迷惑の念がウヨウヨとこちらに向かって飛んで来ている気がする‥‥。
「ミナトさん! あなたはどんな賢者なので
すか、一体!!」
『違ッ! そんなんじゃなくて‥‥というか
君は誰!?』
「あ、そうでした」
キキィィィーイイッ!!
突然に彼が止まるものだから、摩擦で火が起きるくらいのブレーキを二人してかける。
「ぬわっ! 危なっ、お前ら!
なんだよ突然‥‥!」
リグフト君と事故は何とか避けたみたい。
「申し遅れていました! 僕はツルナと言い
ます!」
「あぁなんだ自己紹介か‥‥。そうだよお前、
初対面の人を名乗りもせずに振り回すとか」
『ほ、本当でずよ‥‥はァはァ"‥‥!』
「す、すみません‥‥つい面白いもので!」
どうやらメガネの子はツルナと言うそうだ。
マジで何なんこの子?
「もぉーなんだようるさい‥‥」
「一体なんだろうね」
『あっ‥‥!』
ツルナ君と止まった場所のすぐ側の部屋のドアが開く。
「なっ‥‥お前らかよッ!? 静かにしろ!」
「なんだい君たちか‥‥!?」
開いたドアの中から、ラインク君とサクリ君が顔を出す。
『ごごっ、ごめんなさいぃ!!
てか、何で僕が謝るんですッ!?』
「そうだよツルナ、お前何の為にそんな‥‥」
本当、何で僕が謝るんだよ。
「うるさいのは置いといて、ミナトさん!
ラインク君の固有魔法にはどのような効能
があるんです?」
「置いとくなよ‥‥」
『こ、効能?』
不思議そうにドアからこちらを見つめるラインク君の腕にも、linkの文字がある。ツルナ君はこれの事を言っているのだろうか。
『えーそりゃ‥‥何かを繋げる‥‥とか?』
「うぇっ! ミナト君何で知ってんの!?」
「おや? 知り合いだったのかい?」
「おぉお! ただの偶然ではないようですね
ぇ!! ほら、ラインク君お願いします!」
「おわぁっ‥‥こうか?」
ツルナ君は、ラインク君に向かって真っ二つにへし折れた鉛筆をパスして投げた。
ラインク君はそれを両手に片方づつ持ち、なにやら見つめ始めた。
「よいっ‥‥しょっ」
『えええっ!!!?』
ラインク君はいとも容易く、そのへし折れた鉛筆の2つをズズズという音と共に、鉄が溶解するようにぐにゅうと接着してしまった。
鉛筆の接着面には、折れた形に伴った跡のようなものがみえる。
「まぁ‥‥こんなもん? てかミナト君よく
分かったな、誰かから聞いた?」
『い、いえ‥‥‥‥』
「そうです!! これがミナト君の特徴なの
ですよ! これで僕含め2連続です! これ
は偶然とは考えにくいです!」
「はぁ? それマジ?」
「おや、驚いたね‥‥!」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』
僕はラインク君のそのマジック‥‥? に驚いたまま混乱しているよ‥‥。
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