第20話 unable : 僕には出来ないこと
「明日は休みだからな‥‥。」
『あっ、そう‥‥なんですか‥‥』
「うん、だから‥‥お前がちゃんと元の場所へ
帰れるように色々試すからな?」
『たっ、試すって何を‥‥!』
「まぁ、どんだけ魔法が使えるかとか、個人
情報調べるとか?」
『僕‥‥手品は出来ないですよ‥‥?』
「ハァ‥‥まだお前‥‥。まぁいいや今日はも
う寝るか。その布団は何か余ってたらしい
から、良かったな」
『はい‥‥‥‥‥‥‥‥。』
「‥‥‥‥どうした?」
『すみません‥‥僕、この寮と無関係な人間
なのに、押し掛けて勝手に泊まらせてもらっ
たりして‥‥。本当、すみません‥‥!』
「あー、まぁ、押し掛けたっていうより‥‥
ぶっ倒れてたけど‥‥。まぁ、そんな気にすん
なよ。拾ったの俺達だし、たまたまだろ?」
『そうですけど‥‥それでも、本当にありがと
うございます‥‥。』
「これも何かの縁だと思っとこうぜ、明日
は色々調べるからな。じゃ、おやすみ。」
『お、おやすみなさい‥‥。』
そう言うと、リグフト君も布団に潜って向こうを向いてしまった。
あれ‥‥? この部屋、前までベッドがなかったっけ‥‥。
『あの‥‥僕、ベッド壊しました‥‥?』
「‥‥‥‥‥‥‥‥まぁ、色々あって‥‥‥。」
『そうですか‥‥‥‥‥。』
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』
僕らはこれでも、本当にこの間出会ったばかりの赤の他人。
僕を助けてくれた寮の人たちには感謝の限りだけれど、まだまだ分かんないことまみれだ。
皆の言う魔法とか、紋章が何なのか、僕には
考えても考えてきれない。
そんな事を頭でぐるぐると思っている内に、
その日は眠りについていたみたいだ‥‥。
……………………
「ぉーい、ぉきろ‥‥。」
『‥‥‥‥‥うぅン‥‥‥‥‥‥‥ハッ!!!』
「あぁ、起きた」
『お、おはようございます‥‥!』
「取り敢えず、顔を洗ってくるその前に‥‥
どんな魔法が使えるかやってみて」
『んぇ? いやいや僕何も出来ないです。』
「えぇ? そんな事ないだろ、ほら」
『うわっ、何すかこれ‥‥?』
彼から渡されたのは、昨日とはまた違った怪しい見た目の本であった。
「えっとな、書いてないけど、10ページ
開いて」
『こう‥‥ですか?』
彼に言われた通り、指定のページを開くが、ごっつ怪しく不気味な模様やらが描かれており、今から一体何をするのか検討もつかない。
「うん、そしたら〝光輝きを灯したまえ〟
って言ってみ?」
『えと‥‥光輝きを灯したまえ‥‥。』
………………。
『そりゃ何も起きないですよ。』
「あ‥‥お前、そうか‥‥。もしかして、魔法
ダメなタイプか‥‥? もしそうだったら‥‥
ごめん‥‥。」
『そ、それはそうです! 魔法なんて使え
ませんよ!?』
「え‥‥本当か? ちなみに今のは早けりゃ、
小学校低学年でも出来るぞ‥‥?」
『はい‥‥?』
「マジかお前‥‥。魔法機能障害なのか単に
出来ないだけか‥‥他にも‥‥うーん‥‥。」
彼は頭を抱え始め、僕の不安は更に高まっていくばかりだった。
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