第10話 link:繋がる僕らと腕の紋
「ハァ‥‥? お前何言ってんの‥‥。」
挙動不審な僕の横で、呆れた目で僕を見つめるこの男の子。
とうやらここの学生寮の学生らしく、名前を“リグフト”と言うそうだ。
『そんな‥‥まさか‥‥。』
見慣れない土地、個性的で色とりどりの瞳や髪の人々、腕に
そして、告げられた自分の死。
彷徨い続け、知り得たその全てが結びつき、
ひとつの答えを導き出す。
それはきっと、悪い夢なんてものでは済まされない。
『あ、あぁぁ‥‥あぁぁあ!!』
体の奥底から這い上がるような恐怖感、焦り、不安感。それらに耐えかねて、思わず声が出ていた。
「お、おい? ホントにどうしたんだ
よ‥‥。落ち着け、もしかして調子悪いとか
か?」
リグフトさんを困らせてしまっている。
でも、ここで困っていても駄目だろう。困った時は、人に助けを求めなきゃ。
『ね、ねぇ、ここどこなんです!?
そんなに都会じゃないでしょ!? てこと
は地方なんですか!? 東海? 関東?
中部? 九州‥‥ 』
「おいおい! だから落ち着けって、
ホントどうしたんだよ、マジで!? 」
焦って投げるように質問をしたが、あまりに不審なもので止められてしまった。
「ちょっ、一回場所変えよう。お前、ヘンだ
ぞ? ちなみに昨日から言ってるけど、こ
こタイワ魔法科高校だぞ?」
『えっ‥‥あぁ、、、?』
挙動不審な僕を見かねて、彼は移動を提案した。ちなみに、質問したが彼の返答を理解できなかった。
ここらで今までにビルやら見てないものだから、焦って勝手に日本の地名をいくつか挙げていたけれど、彼の答えはそれらに該当しなかった。
「な、だから付いてきてくれ。誰かが来る前
に‥‥」
ガタッ‥‥パタン‥‥
「よっ、リグフトー」
「やぁ、リグフト君じゃないか」
「うげぇっ‥‥!」
いや、露骨にうげぇって言ったやん。
「あ! 誰だっけ、ミナト君だっけか?
大丈夫だったんか?」
「あぁホントだ! 良かったじゃないかリ
グフト君。」
「いや‥‥なんも良くないだろ‥‥。」
「てか、まだ帰してなかったんだな。何、
もうここで暮らすとかか笑」
「冗談じゃねえって‥‥こいつ、さっきから
おかしいんだよ。急に生まれ変わったとか
言い出すし、ここはタイワ魔法科高校って
言ってんのに分からんとか抜かすし‥‥。」
「へぇ、そりゃ面白いねぇ笑」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』
先ほどのリグフト君の思惑をぶった切るように現れた男子二人組は、彼の話をあてにしないようにニマニマと笑っている。
なんか僕、問題扱いされとるよね。その通りなんだけれど。
いや、待てよ? 片方の子には見覚えあるな‥‥。確か、僕が初めてここで目を覚ました時に話してた青少年っぽい子だ‥‥
「んじゃ、自己紹介しとこうぜ。」
「なんでだよ‥‥。」
突然、もう片方の男子が言った。
このタイミングで?
「俺もここの生徒でラインクって名前なん
だ、一応よろしく。」
『は、はい‥‥、お願いします。』
ちょっと癖のある黒髪で、茶色っぽい瞳。そしていかにも学生といった顔立ちの子だ。
「そして僕はサクリフィセというんだ。これも何かの縁だ、よろしく。」
『あ、ハイ‥‥、お願いします。』
さらっと流れる淡いえんじ色の髪に黄色い瞳の彼は、初対面と変わらず好青年っぽいが、若干のナルシズムを感じる。
「じゃあミナト君も、」
「そうだね、」
『うえっ! ハイ‥‥伏沢 湊斗、15歳で
す。 よろしくお願いします‥‥。』
「な! お前15だったの!?」
「え、マジか! 同い年だ」
「おぉ! 奇跡じゃないか! というかフシ
ザワ‥‥珍しいじゃないか。」
うそだろ!? って事はこの子たち高1か。
まさかのギリ同い年だという事実!
いや、待てよ? それならこの子は全員生まれが遅いってのか、珍しい。
「おいおい‥‥こんなこと言ってる場合じゃね
ぇって‥‥」
「いいやん笑 しばらく保護したら?」
「そうだね、そしたら僕ら英雄だよ笑」
「お前ら‥‥‥‥!」
『ん‥‥‥‥‥‥?』
歯痒そうなリグフト君を横目に、ふと見えたものがある。
さっきの‥‥ラインク君? の左腕に、チラッと文字が書かれていた。えっと‥‥“link”かな?
英語のテストでもあったのだろうか。
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