第4話 relief:安堵の毛布



  ドサッ‥‥







 そう聞こえたのが最後だった。





……………………





 「‥‥ぃつ‥‥れだよ‥‥」

 「しら‥‥って‥‥だっ‥‥もん」

 「ぉきたら‥‥んでょ‥‥」

 


 

 寝起きに話しかけられてるようなこの感覚と音はなんだろう。誰かの‥‥‥‥声?

 また僕は寝てしまったんだろうか。


 「はぁ!? 見守みまもっとけって!」

 「しらないですよ‥‥! 拾ったの僕じゃない

 ですよ!」


 だんだんと‥‥

 

 「元気にな~れ!」

 「大丈夫なの‥‥? もう死んでたり‥‥!!」

 「不謹慎なこと言うなっ!」

 

 周りの音が‥‥


 「なんか息はあるっぽいわね‥‥。」

 「なんだなんだ~?」

 「静かにしたれ~、起きちゃうだろ。」

 「俺もう寝るわ‥‥。」


 鮮明に耳に‥‥


 「消化にいいものでも作ってあげましょ

 うね~。」

 「あ、俺薬草持ってるからいれようぜ!」

 「ついでにトウガラシもいれたろw」

 「お前‥‥知らん人にそんなことすんな‥‥。」

 「まぁ、でも顔色良くなってるんじゃな

 い?」

 

 届いてくる‥‥!


 『‥‥はっ‥‥!』


 その時、僕のまぶたは電気が通ったようにパッチリと開いた。

 それに伴い、僕の意識も元に戻ってくる。


  ガバッ‥‥!


 勢いよく体を起こす‥‥。

 もふもふとした暖かい感触。なんか体に乗ってるよね? なんだろこれ‥‥毛布‥‥‥‥か?

 そう思い、顔を上げた瞬間‥‥。僕の目の前にあり得ない光景が広がった。


 「あ!! 起きた~!」

 「マジで!?」

 「おぉ~、よかったよかった。」

 「どうする? 何から聞く?」


 

 茶色、黒、青、赤色‥‥常人には無いような色とりどりの髪。



 「こいつ何の服着てんだ‥‥? どっかの制

 服?」

 「ねね、どっから来たの?」

 「お粥できましたよ~。」

 「あ! だいぶ顔色が良くなったみたい。」



 瞳の色も黄色、青、緑、黒など多種多様。



 「旅の人なのかしら‥‥?」

 「なぁ、どっから来たんだ?」

 「質問責めしちゃいかんだろ。」

 「てか、こんなことして大丈夫なのか‥‥?」

 「先生来たりして~w」

 「フラグ回収するからやめろっ!」

 


 中には腕なんかに入れ墨‥‥? をしてる人もいる。

 いや、待って‥‥。何で人が目の前に何人も居るわけ? 何で僕は毛布を被ってるの? もしかして寝てたの? と言うかこの人たち誰!?


 「あれ‥‥? なんも喋んない‥‥。」

 「そりゃ混乱するわな‥‥。」

 

 ‥‥ええ、その通り。

 木製? いや石製? の部屋っぽい壁を見渡して‥‥改めて分からん。

 僕の記憶じゃ、さっきまで川やら森やらに居たんですが‥‥?

 

 「もう動けそうか?」

 「はい、あーん。 お腹空いてますか~?」

 「とりあえず誰か先生に報告だな。」

 「止めとけ‥‥なんか言われるかもだろ。」

 「あ、そうそう何で倒れてたん?」


 一つ、また一つと頭に情報が入っては、処理しきらないままに頭に残留する。

 きっとこのまま脳のキャパシティを越えてくんだなと感じた。

 だが‥‥そんな中、一つの言葉が頭に響く。


 

 「お名前! 何て言うのー?」



 薄桃色の髪の‥‥女の子? が僕に聞いた。


 『えっ‥‥う、あ、えっと‥‥湊斗‥‥?』


 「えっ? なんて?」


 今度は近くの男の子? に聞き返された。

 どうやら僕、だいぶ混乱してるみたいだ。



 『ふ、伏沢 湊斗です‥‥!』


 


  …………………




 周りの空気がピタッと止まる。



 「ふ、ふし‥‥ザワ?」


 「ミナ‥‥ト?」



 ‥‥そんな珍しい名前じゃなくない?



 「なにそれ‥‥どこの人? 珍しっ‥‥!」



 珍しいの!? 

 あかん‥‥なんも分からん‥‥。



 「まぁまぁ、一旦みんな落ち着いて‥‥。

 ミナト‥‥君だっけ? 初めまして。ここは

 僕から説明しよう。」



 いかにも青少年っぽい子が話しかけてくる。



 「なんでお前もう呼び捨てなんだよ。初対面

 だし、年上かもしんないだろ。」

 


 うん、その通りです。


 

 「ゴホン‥‥それでは」


 

 うわっ、無視されたやん。


 

 「ここは、タイルワインド立魔法科高等学

 校‥‥。君の話を聞かせてほしいな。」


 


 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥はぁ?』



 聞き慣れない、と言うか聞いたこともない言葉に‥‥見たことも、会ったこともない人々。

 きっと僕はヘンな夢でもみているんだろう。

初めはそう思っていた。


 けれど、この毛布に僕の心は安堵している。

 ふわふわとした肌触りの、暖かい感触。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る