第23話 hurry : ヤバみを帯びる事態へと



 「‥‥‥‥‥‥‥‥。」


 『あれ‥‥?』



 リグフト君は青ざめたまま静かになった。

 


 「てな訳で、ミナトさん借りてきますね」


 「待て待て、バレたらヤバいでしょうが!」


 「もーリグフトお前いつまで言ってんのさ、

 ちょっと助けてあげただけの話だろ?」


 「それは良いんだよ! じゃなくて入れて

 んのが不味いんだ、この寮に!」



 あぁ‥‥僕は良くない事に巻き込まれているかも知れないよ、これは。



 「寮に入っていいのは登録した寮生と学校

 の関係者だけだろ? 他のは原則届け出が

 要るじゃないか‥‥!」


 「なぁリグフト‥‥? お前もしかして‥‥!」


 「許可証貰ってないですね‥‥?」


 「オイ! 何でだよっ‥‥!?」

 

 「そりゃそうだわ! 急にその辺で倒れて

 る奴だし、個人情報も分からない、終いに

 はこの世の人間じゃないですとか言う奴の

 許可証なんか貰えるかよ!?」


 「でも、それとこれとは‥‥てか隠してる?

 ってことはもっと重罪じゃね!」


 「そうだよ! だからやばいってんだよ!

 あと一番問題なのは、もうそれが先生に

 知られてるってことだ‥‥! 誰だよ告発

 したヤツ!!」


 「告発っていうより‥‥ただの親切だと思い

 ますけどね‥‥。」


 

 何だか急に騒がしくなってきた‥‥?

 他の二人も急に焦り始めたよ!?



 『警察沙汰じゃないですよね‥‥? もう

 帰れるんなら嬉しいんですけど‥‥はは笑』


 「お前なに呑気なこと言ってんだよ!

 俺らの停学沙汰だわ!!」


 「ヤバいヤバいヤバいヤバいww」


 「僕知らないですからね!?」



 話を聞く限りは、たぶんこの寮に僕を勝手に保護するという名の下で、連絡もせずに数日間滞在させているのが良くないのだろう。

 ‥‥‥‥ハッ!! そりゃそうか!

 


 「え、どうする!? リグフト!」


 「こっちが聞きたいよ!!」


 「んあれしましょう!! クローゼットに

 隠れるヤツ!」


 「おぉ、多分それ違うやつだわ‥‥w

 あっ、そうだ!」


 「どうした! 何かアイデア‥‥?」


 「あ、いや違う。確かどっかの先輩が言っ

 てたらしいんだけど‥‥一回、他校の友達を

 勝手に部屋に泊めてたら、三週間の‥‥停学

 喰らった‥‥らしいw」


 「まさかの失敗例ですか!?」


 「もう終わったやん俺らァ‥‥‥‥‥‥‥。」



 手を顔に当てるリグフト君、もう笑えてしまっているラインク君、そして背を向け扉へ向かおうとするツルナ君‥‥。

 どうしよう‥‥、自分のよく分からない悲鳴が一番怖ぇよ‥‥。



 『だっ、大丈夫ですよ!! 皆さんは僕を

 保護してくれたんですから、それを何とか

 説明して納得してもらえば‥‥‥‥』




  コンコンコン‥‥‥‥‥‥




 「入りますよー」


 「ァ゜ッ‥‥‥‥‥!?」



 三人の詰まったような声が重なる。

 その瞬間、この部屋の温度が数度下がったような気がしたのは言うまでもなかっただろう。

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