第23話
止めを刺しに来たのか
釘を刺しに来たのか
分かんなかった.
家の人の通年家族旅行は断って,
色々と忙しいと罷り通って.
おんちゃん泊まりに来る流れ.
最高.
だった.はずなのに.
え…
え…?
学生って思ってたけど…
これって…
「あー…
おんちゃん?
それ…
コスプレ?」
コス…プレイヤー?
それ…
今まで私服で会ってたから…
初めて見る.
「確認のためだけど…」
有名進学校の制服着てる.
流石に違う学校だったけど…
その形は…俺でも分かる.
「もしや…
こう…」
「こうさんです.」
重ねて,おんちゃんが言う.
こうさん!!??降参ですっ.
手を出しちゃ駄目な部類じゃん.
犯罪じゃん.
家泊まり来ない?って言ったけど…
適当にご飯食べて送り届けなきゃ…
面倒だなって思わないから…
ほんまもんだとは思う…
思うけど…
はぁ…そうか…
まじか.
「何食べたい?」
から,パスターの流れ.
なんか食べた気がしてないけど,
多分食べてる.
制服飛ばさないように
穏やかな色のを選べって言ってんのに,
ミートソースが好きとな.
もう好きなの好きなようにやったらいいな.
白いの着てる時にカレーうどん食いたくなる
気持ちと,そう変わらんのだろう.
いや,知らんが.
食べながら楽しそうにおんちゃんが話す.
「私,おじいちゃんが一郎なんです.」
って言った.
「うん?」
うん…だから何?
突然?爺ちゃんに似てるとか言われんの?俺.
わっけわかんないぞー?って顔してると,
更に続けた.
「おじいちゃんが私の名前付けてくれたんです.」
「あぁ…いい名前だよね.
音楽に携わる者としては最っ高に良い名前だと思うよ.」
何だか言ってて…
言ってて…
一郎さん…
「あぁ…
いちさんの孫?お孫さん?」
何にも言わず,おんちゃんがにこにこ笑った.
「そっかぁ…
いちさんの孫ね.」
あーだからSNS繋がったのか.
繋ぐ事が出来たのか.
フォークの背をロール風に皿へカチカチ打ち付ける。
こんな行儀の悪い事やっちゃ駄目だ。
分かっちゃいるんだが。
意外に良い音出すんだなって意識移ってたけど、
焦ったように、おんちゃんが固まったまんま、
こっち見てて…
まずかった。
何でも無いように手を止めて訊く。
「婆ちゃんは七子?」
「うんん?七美。」
しまった、外したか。
とだけ、ぼんやり思う。
「今日はおじいちゃんとこ泊まるって,
パパとママに言ってる.」
「あー…そう.」
ぼんやり,おんちゃん見ながら,
「んで,その,いちさんやしちさんはー…
あー…
どういった…つもり?」
どういったつもり…なんだそれ.
そんな日本語あるのか.
情けなくも笑って見せて,
代わりの言葉を…
どう出すんだ.
「あー…だから,
俺は…いちさんとこに,おんちゃんを送ってけば
いいんだな?」
な?
「おじいちゃんがパパとママにうまく言っとくって.」
「はっ…!?」
飲んでた水をバラまくかと思った.
爺さん奔放だな.
次の日,休みだっけ.
潰しにかかられる.
潰れては無い.
ぐんって.持ち上がる.
だけど,おんちゃんが乗ってる.
押さえてるから.
余計…おんちゃんの形が分かる.
感じられる.否が応でも.
おんちゃん!
動かないで!!
なんか,事故って…
そう言って,そうなってしまいたい.
もうあぁっと滑ったとかって…
入れ込みたい.
言えねぇわ…
おんちゃんが,えっろい顔して,
俺の右手をおっぱいに押し当てる.
どこで勉強したのだよ.
はぁはぁ言いながら,
こっちもこっちで抑えが効かない.
効かないけど…
効かないけど…
ちいちゃいのに巨乳持ちで悶える.
あぁ…
別にロリではないと思ってたけど,
もうそのジャンルもいけるでもいいのかもしんない.
「ごめんっ」
…
「退いて…
くれない?」
大人が,ちゃんとしねぇといかんだろ.
ここでノルのは同世代までだ.
「服着て.」
言いながら俺をパンツとズボンに収める。
彼シャツだぁって喜んでた昨日位で良かったのかも.
「何もしないよ.」
って言って,ゲームして生ドラムで歌わせて,
何で,こんな事になってるんだっけか.
ベッドどうぞって下で転がってて…
俺は素面だったし,間違いなんて起こす気配も出さなかったのに.
制服に着替えさせて…
あぁ…まじで…
手を出さなくて良かった.
黙って言いなりになる,おんちゃんに,
何言っても言い訳になりそうだけど…
じゃあ,いいじゃんってなんないのは…
おんちゃんが魅力的でないからでは無くて…
はぁ…上手く言える自信が無かった.
チラチラこちらを見ながら,
物欲しそげに見えるのは,こっちも一緒だっつの.
こっちの気持ちが大きいからそう見えてるだけかもしれない.
もう日射しは明るくて,
「学校行ってきんさいよ.」
そう言うと,
「今日,休み.」
おんちゃんも言って…
「だけどっ行って.
取り敢えず今日は学校行って.」
そう言うしか無くて,
じゃあ一緒に朝飯食べようよとか
そんな余裕も無くて,
取り敢えず帰したかった.
「じゃあ一緒に行ってください.」
おんちゃんが言う.
あー…
「うん,分かった.
ちょっと待って.準備する.」
トイレで…なんかぬるっとして…
なめくじみたいな粘液は女の味がした.
女見せつけられて,いかない男って駄目じゃないか.
もう持たねぇ.
持たないが,
持たせないと.
爆発寸前だ.
鍵をかけてると後ろから,
おんちゃんが
そんなに私の事好きじゃないんですねって
まるで他人行儀に言い捨てた。
焦って後ろ振り返って,
違うっ…
違う違うっ!
俺だって…綱渡りだ…
大事にしたいって気持ちはあるけど.
そういう衝動って誰しもあるもんで…
寸での所で押さえられてるだけで,
何かポンって背を押されたら…
もうよく分からない.
待つよっ待つつもりではあるけれど…
まじで分からなくなる時がある.
それは,君も一緒かもしれないけれど.
君と俺は立場が違うくて,
勢いでっ
勢いだけでっ
いってしまったとき
何が残るのかって…
何も残らないんじゃないかって…
分かって欲しいとは言わないけれど,
貴女を大事に想う気持ちだけは分かって欲しいって…
焦って大真面目に言う
言葉が,どれほど伝わるんだろう.
何も伝わって無いのかもしれない.
だけど…
こうして俺が俺の立場を表明する事に
なんにも意味が無いとは言い切れない訳で…
言葉が…
言葉だけが雨のように降り注ぐだけで…
その場は乾いてて…
乾ききってた。
口の中も。
一旦…離れる…?
ふいに出てきた言葉に,よれよれ頭を振りながら,
おんちゃん見ると…
何も言わずに虹色のヘルメットを被った.
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