第26話

好きだったから別れた.

声に出して言ってみても

何だかおかしい気がした.

好きなのに別れた.

好きでも,どうしようもなくて別れた.

どう言った所で,あんま意味ない.

手元に,おんちゃんがいないってだけ.

楽器メットは無くなって,代わりに虹のメットは手元に残った.

手に入りかけた宝物は自分自身で砕いて仕舞った.

どこか別にコーダ・マークがあったのか見落として,

ずっと同じリピートやってる気しかしない.

曲作ってみるかぁ.

とか,思っただけ.

無駄.

俺の人生と

彼女の人生が

すれ違った。

ただ、それだけ。

それだけなんだ。


ドラマみたいな事はない。

普通に

ドラム叩いてるし.

多分このまま消滅していく事なんだろうと思うけど,

いちさんたちとやるまでは終われない.

随分と最終章を通り越してる.

メンバーは相変わらずなんじゃないかな.

そこまで知らない.知りたくない.

俺は変わらず修理工してるし。

いちさんたちには悪いけど、

つぎはぎだらけで一緒やった後、

色々と終わらせるつもり。

もういっその事ぶっつけ本番でも

いいんじゃないかって。

そっちのが随分いいんじゃないかって。

そう思ったりもしてる。


俺は,きっと

同じくらいの人と出会って

同じくらいの心配事して

同じくらいの生き方するんだ。

それを待ってる。

待ってる。

ただ、あなたを。

何時か出会うあなただけを。

それだけ.


延々と繰り返すダ・カーポ.

勝手に決まってるフィーネと

自分で決められるフィーネ.

なんてかっこつけたところで,

題材だけ無数に存在するだけ.

そもそもドラム譜は単調で.

ごちゃごちゃして無数に絡まる

曲なんて未だに

したためられて無い.

身を以てハッピーエンド完成させたい欲は健在.


意外に

きいちゃんは結構際いとこまで絡んでるらしかった。

俺が思ってたんとは違う感じの人だったのか。

押し切りで結婚したらしい。

籍だけ入れたって。

じんから聞く.

どーでもいーし。

めでたくねーし。

それが,あいつなりの責任の取り方か.

そう思ったら,

もう考えるのを辞めた.

これ以上は無駄だし,

俺の時間を費やす必要のない事だ.

もう奴らについての一切は

要らないよ

とだけ,じんに告げる.

晴れて俺は全てのしがらみから自由だ.

これから,どーするー?

ってじんの呼びかけに,

さーどーしよー.

って笑って,

俺らで何か始めてみるー?

言うと笑ってた.笑ってた.

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音が聴こえる 食連星 @kakumi

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