第25話
1人の夜が辛くて,
何だか温もりが欲しくて,
は、ただの言い訳だと思ったりもするが。
あんだけ要らないって言い張ってた物を
引っ張り出す.
持ってるから興味もあって。
コード読み込んで,
こんなん初めてだなーって
緊張しながら指示に従う.
偽名使って登録するなんて,本当は駄目なんだろう.
首にほくろがある人がいて,
あぁ,きいちゃんと一緒だなって思って.
もう無理だったら,ほくろをずっと見て置けばいいかって.
そしたら,きっと大丈夫だろうって.
そう思って.
「あぁきぃちゃん.
俺,ここで人待ってて…」
言ってておかしな気がした.
後ろ頭襟足逆なでしながら,あれ?って.
ピンポン鳴ったら出て相手を入れるって流れだったよな.
それからシャワーを先に浴びて…
あぁ今それどうでもいい.
まず,首確認して,ほくろある人だなって思って,
そしたら、まぁ何とかなるよなって安心して、
視線上げてって顔を見て…
「え?」
口に出てた.
「他に誰か呼んでる?
人数増えたら別料金ですけど.」
って…
え?
何で?
・・・
「ひとは…近くにいんの?」
「送ってきてくれてて下で待ってる.」
そう…なんだ…
「案内して.」
ここ…前金で…
払ってるから,このまま出ても大丈夫だ.
こういうとこって,閉まったら開かないはずだ.
外から.
でも,まぁそんな事関係無くて…
中,忘れもんないよなって思っただけで.
見覚えのある姿見たら,
もう抑えが抑えだけが利かなかった.
「お前ぇっ!!!
何て事してくれてんだっ!」
掴みかかって引きずりおろして,
よく考えたら俺も何て事してんだって奴なんだけど.
それは,もう棚にあげとくしかないだろ.
「外道がっ!!!」
って言ってるんだが,言いながら,こんなん初めて
他人に向けて言うよとか冷静にツッコミ入れてて.
頭に血がのぼってんだけど,そんな俺を冷えて
見てる自分も居て,不思議だった.
更に不思議だったのが…
だけど,殴りかかる俺に背を向けて…
きぃちゃんが庇うんだよ.
ひとを…
あれ?これ,おかしいなって.
それでも,
それでも,
きぃちゃんは,ひとを守ろうとするんだって.
偽名まで使ってって捨て台詞を聞いて、
それ無視したまんま、
「きぃちゃん,俺と一緒に帰らない?」
って背中に声掛けて。
きぃちゃん泣きながら,ひとを庇ってて,
首を振りながら,一緒には帰らないって
拒絶されて.結局、俺が泣かすんかって思って。
そうかって一言呟いて,後にする.
入口出たら、そういえばここで立ち話をしたんだったっけって。
地面を眺めて.それから、
代わりに泣いてくれてるんだなって空を見上げて…
雨の中スリップダウンするかと思った.
星が見えなくて良かったとだけ思って…
あの電話は俺に助けを求めた訳じゃ無かったんよなって。
俺じゃ…俺じゃあ無かったんよなって.
確定的な何かが無いからって大人の狡さを
発揮した。
分かってたはずなのに分からないふりをした。
見ないふりして見えないからって
逃げた。逃げたんだ。
関係性はどうこうなるけど出来るけど
立場的なものは何処切り取ったって
変わんなくて.
たまたまだった。
偶然、目に入った。
同じスカートの模様と同じネクタイをする子と。
おんちゃんは、よく…似合ってた。
街に溶け込み景色に馴染み、
笑いながら話す姿はドラマのワンシーンみたいだった。
そんな言うよりドラマとか見ないが。
はえぇなぁ、おい。
切り替えが迅速過ぎて…
追っ着かなくても
お前は関係ねぇよって、
そんな感じ。
その手を離せとかって
おっちゃん出てってもな.
想像するだけで笑える.
おんちゃんは双子だった。
そういう設定で。
片割れは遠い異国の地に飛んだんだ。
片手で目を覆って下向きながら…
溜息吐き出すしかなかった。
魂までもが抜け出すような,
そんな
そんな
そんな
気がした.
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