第9話
きぃちゃん今日も可愛かった。
また合わせの時にーって店、後にした。
スティック手に馴染むまで
ちょっと時間がかかる。
自分のものにするまで
触れ続けよう。
そのうち、木から自分で削り始めちゃったりするかもしれない。
木から厳選して。
マイスティック。
そしたら仏像とかも彫り始めちゃって、
有名になっちゃったり…
妄想激し過ぎる。
ちょっと離れた場所に停めた。
時間安いから。
治安が良くなくて、治安が悪くないからだと思ってる。
完全欲には塗れてて、完全悪からは外れてる。
あー…
平たく言うと、
色物街。
あーあ。
こんな昼間っから欲をかまして。
畜生。
こっちはプラトニックなのに。
忍ぶ恋なのに。
あーあ。
これは、あれだ。
妬みや僻みの類。
別に、
やる事やってれば、
昼間っからでも良い訳だし、
自由に楽しめば良い訳だし。
んんん?
あの後ろ姿…
な訳…
ねーよな。
ステージで誰よりもメンバーの後ろ姿を眺める。
よしっいくぞって意気込みを感じ、
音を奏でる背中を感じ、
満足して終わる盛り上がりを感じる。
他人の背中似で有って欲しい。
あいつはカラオケ店で働いてるって言ってた。
この辺、職場なのか。
同僚と腕を組んで出勤すんのか。
こっから男の顔は見えないが、
女の顔は見える。
なんか多分見覚えあるかもしれない。
頭ん中でピースが、
かちりとはまり込むような気がして…
左前の額が眉と一緒に痒くなる。
ちょっおいっそこっ!
もう間違っててもいいやって気持ちで、
「てめぇ誰と間違ってんだよっ!」って言われたくて、
「きぃちゃん呼んでたよ。」
背中に呼びかける。
息を吞む。
振り返られて、
「顔出して来たから、それはない。」
って…
ひとが言った。
額に手を当てて溜息が出た。
「ここ職場なの?」
「いや。何で?」
何で?何で何で?何が何で?
このまま入らせる訳にはいかない。
「取り敢えず、ひとは
きぃちゃんとこ顔出して。
おねいさんはカップケーキの作り方、
俺に教えて。」
おらっ解散。
顎で、ひとを先に行かせる。
女性が、
「何よ勝手な事してっ。
ひとっまた連絡するから。」
って声を荒げてる。
こっちへ掴みかかってきて、
髪とか引っ張られそうな勢い。
そんなの関係ない。
俺にとって全く。
でも、禿げたくはない。
なんかカフェ入ってっとか思ったけど、
もう立ち話でいいか。
「ひとにカップケーキ渡してた方だよな。」
強烈な人だった。
食べなくてもいいから、
私が作ったカップケーキを抱えて欲しいって
ごねてた。
根負けしたひとがカップケーキ持って、
返そうとしたら受け取らなくて、
何故か最終的に、こっちへ投げつけられた。
至近距離、上投げで、
よく自分もキャッチできたもんだと…
落とさぬよう掴んだから
原型は留められなかった。
あれで無傷に受け止められたならば、
多分今頃違う選手。
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