第10話

俺…別に…

こんな事したい訳じゃない.

破滅するやつは自滅すればいいし

尻拭いとか

進んで

したい

訳じゃない…


だけど…

きぃちゃんの悲しい顔が…

見たくないだけなんだ.


目の前で

がーがー言う

ブルドーザーみたいな女性を

どうしたらいいんだ.

見た目がとかじゃなくて,

勢いてか

圧力が…

まさにそれ.

寧ろ綺麗目な女性で,

こういう目で見ちゃ駄目なんだろうけど,

スタイルかなりいいな.

何カップだろう.

あぁ違う.


「ごめん.

お姉さんの言いたい事も分かる.

分かるけど…

今は俺の話聞いてくれる?」

少し黙った女性は,

きぃちゃんとは全く違う.

化粧っけの無いきぃちゃんは

そばかすがあって

笑うと八重歯も可愛くて

いつも一生懸命で…

ひとの事が好きなんだ.


はぁ…

駄目だ.

落ちてる場合ではない.


「カップケーキの作り方は,

どうでも良くて.」

「でしょうねっ.」

あぁ…

入りおかし過ぎるわ.

これ.

ちょっとトークの練習した方がいいかもしんない.

いつか時間延ばしてって言われた時,

映像事故みたいになってるかもしんない.


「っ…いつから,

ひととこんな関係?」

「そんな事

あなたに関係ありますかっ!?」

無いよな…

ねぇわ.

はぁ…

メンバー間の実情は話せない.

どうすっか…

どんな手が出せるか.

実際にではない事は俺も理解してる.

「もう話す事無いなら,

私は,これでっ.」

迷惑なのよって,あれこれ言われてる.

「ちょちょちょ…

ちょっと待ってっ.」

こんな時に,ちょっと待ったを出せるなんて…

あぁどうでもいいわ今.

腕掴みたい所だけど,

叫ばれちゃ敵わない.

ラブホの前で.

防犯映ってたらやだな.


「お姉さん,ひとのファンだよね?」

「そうですけどっ.」

うんうん頷く.

「だよなぁ.

物っ凄かっこいいよな.

どこが一番好きなの?」

「全部ですっ.」

おぉ…終わりそう.

会話が.

全部って例えば?

って聞いちゃっていいの?

全部は全部ですって言われない?


「今…

ひと重要な時期でね.」

「えっ?」

あ…

喰い付いてる.

「ほら…

一番のファンなら分かるよね?」

「はい…まぁ…」

この言葉が,それ程,効力を持つとは思えぬ.

はぁ…

どんな駄目押しが効くのか皆目.

「とにかくっ

スキャンダルは困んの.

大事な時期だからっ.」

「それいうなら,ベース替えてください.」

えっ?

「何で?」

何か知ってる人?

「女がいるって所が嫌なんです.」

はぁ…

こいつ…

俺の前で,こんな事言いやがって.

やべぇ額に血管浮いてそう.

今,俺上手く笑えてる?

「このメンバーでやってきてるから.

このメンバーでいきたいんだ.

応援して貰えないんだったら,

ファンって言えなくない?」

「私はっ!ひとのファンですから.

他のメンバーは,どうだっていいんです.」

ほぉ…

そうくるか.

こいつが強烈キャラ過ぎて…

なんか,きぃちゃんに会いたくなった.




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