第15話
きいちゃんが連絡くれた突然.
まぁ向こうは突然かは分かんないけど,
俺的には突然.
何?って返そうかと思ったが…
『どーしたの?』って打ち込んだ.
文字って…
伝わり方…
様々だから.
ただ,それだけだ.
『今いい?』
の文字に電話かけて欲しいとか思わない.
そこまで頭悪くない.思い込み酷くもない.
ちょっと知った事はあるが,
もしかしたら俺への愚痴かもしれねーし.
なるべくフラットな気持ちで臨む.
ちょっとスマホの前で正座してるけれど.
こめかみ押さえながら,
なんかやべー奴っぽいなと.
え?
終了?
おいーって
誰にツッコミ入れたらいいのか分からなかった.
あぁ,今いいのか分かんないのか.
ツッコミ入れるとしたら自分にか.
『今,部屋.』
『1人.』
『何もしてない.』
『だから,余裕ある.』
『どうしたの?大丈夫?』
きいちゃんが静かなのに,
1人で焦って,短文を送り続けて.
『電話かけていい?』
そう戻ってきて…
間違ってるんだろうか
あいつと俺を.
そう思いながらも,
通話マークを押してた.
「けも?」
ってきぃちゃんが
耳元で話す.
「あーそう.」
「何してたの?」
「何もしてなかった.」
「うそぉ.」
「いや,ほんと.」
ただの,俺は,バンドメンバーだ.
そう言い聞かせながら,
言葉を探す.
「そろそろ新しい曲いきたいよな.
コピーでもいいけど.
ほら,ふんふんふふーんって
今流れてる奴.」
「うんうん,あるよねぇ.
あれでしょ.」
同じように,きいちゃんが歌詞で歌う.
「そうそう.それそれ.
よく分かったなー.」
耳が頭が体が,脈打つなんて言えない.
「リズムと音取りは正確だよねぇ,けも.
いいよねぇ,あの曲.」
なんだ曲か.でも,多分褒められた.
「今日は星が,よく見えるね.」
「ほんと?」
「あー見えるよ.
見えるとこいない?」
「ちょっと移動するね.」
「あー,どぞ.」
何だか移動する音とゴソゴソする音と聞こえてた.
一緒に帰る道すがら一緒に見上げて眺めた.
そのまま、ずっと続いて、もっと距離が近付くと思ってた。
勝手に。
貴女は別の奴の月になって,俺は御役御免になってしまった.
「綺麗に見えるね,ほんとに.」
近い声は遠い星空を繋げる.
星空は,貴女まで繋がってる.
遠い心は繋がらない.
だけど,
お互いの時間を今,昔のように共有している.
暫く星の瞬きを聴いてた.
何を想っているのか.同じ想いだったらいいだなんて,
無責任な事は言えなかったけど.
突如,
「星空が綺麗だから,もう電話切るね.」
きいちゃんが言った.
寒くない?安全な場所にいる?
言えずに呑み込む言葉.
ただ発する事が出来たのは,ただ一言.
「分かった.」
あぁ…星空の話なんてしなければ良かった
とか,
電話は何の要件だったのか
とか,
俺の声が聞きたかったから?
とか,
あの星が全部取り込んでくれたらいいなと.
ブラックホールみたいに.
本当にあっけなく切れて,
本当は妄想の中の出来事だったのかと,
通話マークだけ眺めて,
星空を眺めるだけ.
あの辺の星に俺の気持ちは置いて来た.
曰く有りな星では無い事を願う.
言う程,瞬く星の謂れなんて知らない.
嘘か真か星の神話なんて興味がない.
ただ,貴女の話す姿が見たいだけ.
貴女が星空を気付かせた.
いつも前見て前だけを見て,時々振り返ってた俺に.
上を向かせた.
星空眺める事なんてしなかった.帰り道.
貴女が俺に気が付かせたんだ.
あの時あの瞬間の星を覚えてる?俺だけか.
呟くのみ.
変わらずにあり続ける事象の前で,
俺らの立場が変わった事を身に沁みるだけ.
あんなに数多の星の数だけ人もいるのに,
あれだけが欲しいって、あれじゃなきゃ駄目なんだって思ってんのに、
弾かれただけで結ばれない.
一緒の星座になれないなぁ,なぁ…お月さん.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます