第21話
唐突に言われた.
「私の事知ってますか?」
いや知らねーよっ.
「なんかキャラだったでしょ.
アイコン.」
何て呼べばいいか分かんねーよ.
君って呼んでるからいい方だ.
お前とか,こいつとか思ったからなっ.
「距離遠くないですか?
お菓子受け取ってくれたのに.」
あっあー…
「君だけじゃないよ.」
誰のであっても…
は広域過ぎるけど…
「大体回収して持って帰ってるから.
君のだけ特別にって事じゃない.」
はぁ…
俺のSNSどっから入手したんだ…
怖過ぎる.
そして,そっちも怖い事してるよ.
誰それ構わず繋がって手あたり次第会ってたら危ないよ.
「だーかーらっ,
受け取ってくれた私のをって
想ってんならお門違い.
俺は対象を…見てない.」
見て無くはねーけど…
これ言ったら,まじでややこしい事になるから.
呑み込む.
お互い勘違いで.
解散した方が.
ダメージなく前向ける.
勘違いで引き下がってくれよ.
今なら,まだ間に合うだろ.
深入りして,ずぶずぶで沼って
じゃあって…
きつい.こっちが.
期待もしたくないし
されたくもない気持ち
分かるー?
期待する気持ち知ってるから,
どん底も苦しみも知ってるから.
「何の感情も無く受け取ってるんだ.
だから,ごめんねー.
ほら,お互い勘違いしてたって.
事で.
SNSもブロックしとくね.
じゃあ,ばいばい.」
「こんなに暗くなって帰れませんっ.」
「知らねーよっ帰れよっ!
こっから外見えねーじゃん.
てめぇのせいじゃねーか.」
「それが素ですかっ!?」
「どっちも素じゃねーよっ.
こんなキャラじゃねーんだよっ!
気取ったし
今荒れてっし.
いつもっもっと穏やかな好青年だっ.」
「自分で言いますか~?」
「煽んなっ!
なんか疲れてきた.
心底変な奴だよっ.」
「興味持ちました?」
「持たねーよっ帰れっ.」
「まだ,やってたの?」
あぁ…じん…
変な奴に引っかかってる.
ほらっ
にこっとして,
じんの後ろに隠れる.
じんの方が華奢過ぎて,
大部分は見えてる.
見えてる…
けど,そんなん関係ねぇ.
君の好きなじんが来たよ.
『今度奢るから,この子いなして.』
ヒソヒソする.
もう,まじで手に負えない.
学生時代から厄介な人でも宥められる印象.
穏やかに落ち着いて,あの声で諭されたら,
誰だっていいように出来る.
「私は,けもさんに用があるんです.」
おぉ?
違うでしょ.
俺じゃなくて,じんに用があるんでしょ.
こっちは,もう用がない…
「だって.」
じんも後ろ向きながら面白い事が起きてる級で笑う.
面白くねーんだよっ全くっ.
「じゃぁ俺が片す間だけでも,こいつ…
この人,相手したげてよ.」
はぁ.
「片付けの前に連絡先教えてください.」
「はい…」
何だろう,この感じ…
先輩から絞られてる気分.
「あぁ…SNS繋がってるから良くね?」
「ブロックするって…」
「っしません…」
「確実性のため,じんさんから聞きます.」
「え?
ちょいっそんなに信用無い!?
じんの連絡先知りたいだけだろ.」
なんか言っちゃって,
なんで当たり前の事,こんな躍起になって
指摘してんだろうって…思って…思った.
もう…
好きにしろよ.
「じん,その子の爪可愛くなってんよ.
俺,申し訳ないけど,その子の爪飾り剥いじゃって.
事故.偶然.不可抗力.
きちんと弁償はするって話した.
1枚無いけど,そういった理由.」
俺ってば二枚目.
「えー?見たらいいのー?」
首を少し横に引いて,女の子に視線を遣る.
後は勝手にやって.
可愛いねーって言ってる端で
嬉しそうな顔が映る.
端末お互いに持ってる様子が…
何やってんのかな俺.
部外者感.
「片して帰るから,ついでに送ってやってー.
その子.
送るつもりだったけど,もっと遅くなっちゃいそうだから.」
「えー?俺やっといたよ.
褒めて貰ってもいいよー」
え”!?
まじかー…
今なんつった?
じんもだけど,俺も.
いや,嘘も方便でさー…
送るつもりって…まるっきり,つもりもねーよっ!
全て見ていて…
いい感じの時に割って入ったって感じだな…
俺ずっと背を向けてたけど…
この子も,姿を見ながら話伸ばしてた感じか…
知らぬは本人ばかりなり.
今…有難うの気分ではないな.
「じん…ありがとう…」
「いいよー.気が利くよなー.
なー?」
「…おぅ.一緒帰ろ.」
「あぁっとー今日用事があるんだったー.
悪いなっ.」
棒読み+含んだ笑顔はっ
やめろよっ!!!
「いや待て。違うんだ.」
「分かってるって.」
いやいや分かってねぇ!
それは真の答えじゃねぇ.
違うんだー!!!
無言で女の子に視線を遣って,
頭だけ,じんの方へ向けて振る.
一緒に首を傾けて…
おいっお前も,それをしろって言ってねぇ.
お前も違うって言えよっ!!!
今だろっ!出番!!
ふっと笑って去ろうとする.
じんが.
「待ってっ!」
これ言ったの俺.
ほら,止めた.
はよ言え.
さっきと同じジェスチャーをする.
伝わらねぇ…思っ切りいって首がいてぇ.
「連絡するね.」
これ言ったのじん.
あーっ.
「ひとときぃちゃんは!?」
「先,打ち上げてる.」
振り返って,じんが言った.
「来なくて,じゃないや.
来れなくてもいいって.」
あっそう.
なんか…
ダメージ無かった.
思ったより.
そうかなーって思ってたし,
聞くつもりも無かったし.
「いい?」
じんを,ぼんやり眺めて,
「もう,行っていい?」
じんが続けて…
いや,行ったら駄目だって思ったけど,
なんか,もう行かせてもいいかなって
思ったりもして.
こんだけ御膳立てしても動かないなら知らねぇよって.
取りに行かないと食いっぱぐれる.
それは誰であっても.
俺は…
あぁそうだ…俺のすべきことをしていなかった.
このまま,行かせてはならない.
「今日は音出なくなって悪かった.」
「出せなくなったんじゃないの?」
じんが言った.
「うん出せなくなった.」
「理由には正直に従った方がいいよ.」
なんか…斜め下見てしまった.
「よく分かんないんだ.」
正直に出した言葉に,
「もっと周りは分かんないから大丈夫.」
そう言って,右手を気軽に上げて行ってしまった.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます