第5話

最後,スティックへし折って

あばよとか

ばいばいとか

言っとくか.

とか思って見たけど,

スティックは

もう俺だったし.

俺は

スティックが全てだったし.

はぁ…

普通に後にした方が

情けないけど

かっこもつくだろうと.


「なぁ,じん.

そこまでスネア強固に設置されてないだろ.」

確かに,しっかりは取り付けたけど時間かかり過ぎ.

して,

こっちも,そんなに撤収まで時間かかんない.

けど,

何だか色々掛けてやってる.

時間も想いも生き方も.

「ここ何時までに空けるっけ.」

跡だけ残った顔を向ける.多分.

鼻…垂れてねぇかな.

汗塗れだし,今鼻水ついた所で…

問題ないな.

袖で拭って…

また見ちゃうもんだから.

ははっ.


「お前っ.」

「あー何?

もう今更だろ.」

そういや,どれも返事返ってきてねぇな.


「次は色恋無しのメンバーで行こうって.」

「あんっ?

ほぁっ勝手にすりゃいいじゃん.

切る奴に言う台詞じゃねぇ.」

新メンバーで,よろしくやれよ.

暫く…

車いじって,過ごすかなー.

乗ってるバイクは,もうあたり尽くした.

「っか.」

…っか?

爺さんか?

痰絡んだ?

「けも2人で活動する?」

「誰と誰が?」

「俺とけも.」

「へ?」

斬新だな.

あんま無い組み合わせじゃないか?

「奇をてらってるとしか…

常軌を逸してるってか…

おかしくないか?」

それ.メロディーライン歌だけって…

「残り音源入れたら厚み出るって.

もう,このメンバーで

けも限界だろ.」

「だからこそ,新しいメンバーと交代だろ.」

「ひと引っ張られてるみたいだし.

一緒にきぃちゃんも出しちゃえば良くね?」

「えっ!?

ひとは,まぁそれでもいいかもしれんけど,

きぃちゃん,どうすんの?」

「なんか,こっちも宥めるの面倒になって来たし.

新しい風入れても良くね?」

「待って待って.

だから,俺が出たら良くね?」

「けも居たら,こっちは後どうでもいいんだけど.」

「えっ!?」

はぁ…

諸悪の根源ここに見たりじゃねぇけど…

「なんか…悪い.

恐らく,俺が台風の目か.」

「お前,穏やかじゃないだろ.」

「分かってる.」

けど…

はぁ…

「大丈夫だから.

このままで.

まだ,様子見てて.」

「えっ!?」

こっちが,あれで,それで,

引っ掻き回して

崩しまくるとか…

だせぇな.


よっしゃ.

荷物持った.

「じん,打ち上げ行ったら?」

「何でっ!

あん中,入れ込むとか…

何考えてんだよ.」

「ははっ.」


「じんさんっ!」

ふぁっ!?

2人して視線が…

女の子の声の方へ向かう.

出待ちか.

「これっ.」

なんか妙に,

ちっこくて,

ふわふわで可愛いな,これまた.

「有難う.受け取れないんだ.

気持ちだけ.」

じんが,にっこり笑う.


姿勢低くして固まってる子の,

一生懸命が,

いつも伝わってくる.

「じんさん,ダイエット中だから.

こっちで良ければ貰いますよ.」

他のメンバー絶対に受け取らない.

から,

いつも助け舟を出す.

そのまんま,

別の奴にはやらねーよの子もいるし,

そしたらって出した手を引っ込められなくて

こっちに渡してくれる子もいるし,

人それぞれ.

あっ,一旦お目当ての人に(大概じんかひと)

持たせて,こっちに回すよう指示してきた子もいた.

健気だよなぁ.

この子は,どのタイプだろう.







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