第11話

もう,これ以上

阻止出来る気がしない…

あとは…

ひと側からアプローチして…

アプローチして…

なんか…

めんどくせぇな.


何でっ

俺がっ

こんなにも

こんなにも

こんなにも…

はぁ…


そうだなっ,ひとに掛け合ってみよう.

一時の気荒れで

あれこれやっちゃいかんと

十分学んできてるはずだろう.

そんなに若気の至りは使わんで良し.


「はい,まぁ分かりました.

お姉さん.

時間有難うございました.」

深々頭を下げて,

肩落とすの見られてんのかなって…

はぁ…

「私,お姉さんじゃないからっ.」

知ってんよっ!

便宜上,呼んでるだけであって,

お前は俺の姉ちゃんじゃねぇわっ.

そんなん百も承知じゃぁぁつ.

「すみません.」

あぁああああああっああああ!

バンド背負ってなけりゃ,

背負ってねぇけど…

なんか色々投げ捨てたい.

目の前の人ごと.


何ですか…

もう話し終わったっす.

「私,うぃめ.」

ん…あぁ…

聞いてねぇ.

「うぃめさん,お時間有難うございやした.」

もう,行っていいよ.

左の大胸筋の辺り痒くなって,Tシャツの上から掴む.

汗かいてんな.

はぁ.

めんどくせかった.

「あっ.

うぃめさん.

ファンの前に…」

あっ…

やばい.

これ.言っていいか分からん.

「何?」

振り返って,うぃめさんが立ち止まる.

「今から,だいぶ失礼な事言ってもいいですか.」

言ってて,いや良くねぇやろって

自分ツッコミ入れて…

「いや…やっぱ大丈夫です.」

言えねぇ.

「聞かなかった事にするから言っていいわよ.」

って言った.うぃめさんが.

聞かなかった事に…

しなさそー…だ.

あぁ…でも,

「ひとに営業かけてたって…

感じですか?」

聞いちゃった.

そっち系の職業人?

どっか,ひとの事も庇ってやりたかった…

のかもしれないし…

きぃちゃんの好きな人が

そんな下衆な奴じゃないって思いたかったのかもしれないし.


「本名ですけど.

ひとの事,私,愛していますから.」

あぁ…さいですか.

「すみません,だいぶ失礼でした.」

いつか,この話売られたらどうしよう.

その前に,俺が売れてないから,

ネタにはならない.

大丈夫大丈夫.

なんか,泣きたくなってきた.


ひと…

きぃちゃんとこに顔出したかな.

スマホ取り出して,

画面つけたけど…

ボタン押そうか指が迷って,

またポケットに押し込んだ.

何やってるんだろう.

ひとに連絡するのも何だかだし,

きぃちゃんに連絡するのも

もっと何だかだし.

さっきの…うぃめさんのスマホ

へし折って,連絡取れなくさすのが正解だったか.

そんなアグレッシブな正解無いやろ.

こっちが間違いで駄目になるわ.


ちょっと飛ばしめに帰って,

我武者羅叩くのが

多分,今の大正解.



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