第7話

「なんか色味が…

変わってるくね?」

おぉそっからか。

それ言っちゃうと、もう進まんから。

「念入りに焼いてくれちゃったんじゃねぇの?

クリーンでいいじゃん。

もう結構、手作りだから。

もう、この一言に尽きる。

画一的な市販品じゃねぇのよ。」

「おぉ、なんか上級者。」

「おぉよ、何でも訊いちゃって。

達人の域だから。玄人よ俺。」

なんか言ってて、ちょい阿保みたいだ。

「早く食べちゃって。」

何で俺が緊張しながら見ちゃうんだよ。

いやいや作ってねぇから。

でも、なんか、あの子の代わりに見届けてやんないとって。

親心?おっさんか…

はぁ。

「あぁ…

コーヒーの味がする。珍しくない?」

「さぁ…

市販品の粉もん食べつけないから分かんねぇ。」

「食べてみ。」

「あいよ。」

「コーヒー味ですね。」

「何で、ちょいちょい敬語?」

「真剣さ伝わるだろ。」

「意味不。」

「うるせぇな。」

無言で、サクサク。

「喉乾く。」

「確かに。」

「何でコーヒー味?」

「あれだあれだ。

MCでカフェインジャンキーの話してた。」

「あーっあ。」

「凄いね。」

「何が。」

「打ったら響くの。

じんの言葉が、相手に届いて反響して、

また混じった音が出んの。

これは、戻って来た。」

「あぁ。」

「凄いな。」

「凄いな。」

ほんと凄いわ。

届く音を出したいと思ってる。

じんの声は、努力のたまものか、

天性のものか…

それは、よく分からんが、

そんな音を出し続けたい。

んまぁ、魅力って面が無きにしも。

はいはい。

強がり。

あるからなんだと思ってる。

「あの時のさ。」

「はいはい。」

あぁ御免。

「適当相槌じゃねぇから。

何?言って。」

「珍しくさ。」

「うん。」

「けも宛てのあった時あっただろ。」

「あっあぁ。

あったあった。」

珍しくって…

んーまぁ珍しくだったわな。

メンバー全員にで、

誰も受け取らないから全部回収した。

「緑だった。じんが赤で、ひとが青で、きいちゃん黄。」

タグがね。

「どうした?」

「どうしたって?

食べたかって?」

「そうそう。」

「食べたよ。食べるだろ、そりゃ。

緑の一番に。そんな事しか出来ねぇし。

嬉しかったし。」

なんか笑ったら、じんも笑った。

喉乾いた。


「きぃちゃん、どうすんの?」

えっ?

「きぃちゃん、どうするって?

変わらずでいいって言ったよな。」

「違う違う。」

「えっ?」

「このまま?」

このまま…

「どっち転んでも破滅しそうじゃね?」

「旨くいっても下手こいても?」

「そっそ。

旨くはいかなさそうだろ。」

「受けてくれたら?」

「え?二股で?」

苦笑い…お互い。

「ちょっと嬉しくて

ちょっと悲しくて…

かな。

きぃちゃんのキャラじゃないっしょ。」

喉乾く。

幻想と理想と現実と現状と

皆使い分けて生きてる。

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