第24話 最終決戦(前編)
数ヶ月前から彼女は更なる行動を起こした。自身で作る毒物をどうにかしてあの3人にも取り込ませたかった。ここから出られたとしてもあの3人と直接戦うこなる。その先は死しかない。もと幹部だった彼女にはそれが痛いほどわかっていた。
毒を盛るとなると気づかれる可能性もあるが、無謀に戦いを挑むよりこちらのほうが勝算があると考えた。彼女は監視の目を警戒しながらも行動を起こし始めた。
パンドラには毒の生成という能力は備わってなかった。しかし、記憶を取り戻したとき新たにそれを手に入れた。そして、新たに備わった能力がもうひとつ。自身の分身をつくることだ。分身能力を使える者は差はあれど数多くいる。しかし、彼女の分身は彼女自身の力の消費がない。そして、その場に合わせたサイズをつくることができ、たとえ巨大なドラゴンだとしても誰もその存在に気づくことはない。この2つは影の一族の末裔である彼女にしか備わらない特殊な能力だったのだ。
月日は流れ、あるとき彼女は近くにシャドウがいると感じた。一族としての力かそれとも双子ならではの感覚か。彼女は今までばらまいた時限爆弾を起動し始めた。効果がいつ出るかはっきりとはわからないが、彼女は冷静にその時を待った。
シャドウと影光、2人だけの戦いが始まった。その裏では最強の後ろ盾、パンドラが動いていることも知らずに。2人の戦況は圧倒的不利だった。倒しても倒しても数を減らさない戦闘員、セーヴィスたちがいる本部までの距離は一向に縮まらない。それどころか遠のいているようにも思える。シャドウに与えられた特殊な能力、彼の内なる騎士団でも太刀打ちができなかった。傷を負うことはなくとも、シャドウの力が弱まれば、比例するように彼らの力も弱まる。しかし、2人は諦めなかった。変わらぬ状況に痺れを切らしたのか、2人の目の前にハデスとアレスが突如として現れた。一気に方をつけようという算段だった。2人にとって、より厳しい戦いとなっていた。
その頃、本部内では妙に慌ただしくなっていた。パンドラが仕掛けた時限爆弾が効果を発揮し始めたのだ。1人また1人と血を吐き、その場に倒れていく。パンドラについていた監視も倒れ、彼女はやっとこの場を脱出できるようになった。しかし、部屋自体が厳重に管理され、なかなかその扉を開けることはできなかった。加えて、彼女を拘束している枷により、使える力は半減していた。それから、およそ1時間後彼女はやっとの思いで脱出することができた。彼女は鈍くなっている体に鞭を打ち戦場へと向かった。
次々と人が倒れていく現象は、外にいる戦闘員にも及んでいた。高層から戦いの様子を見ていたセーヴィスがいち早くそのことに気づいた。建物内外にいる戦闘員と連絡を取っても原因はわからず、その間にも人が次々と倒れていった。
セーヴィスからの通信はシャドウ、影光と戦っているハデス、アレスの耳にも入った。珍しく焦っているセーヴィスの声にアレスが何かに気づいた。そして、その場をハデスに任せ、自身は建物内に向かった。目指したのはパンドラがいるあの部屋だった。
アレスが部屋につくとそこにはパンドラはいなかった。アレスはそのことをセーヴィスとハデスにすぐに報告した。しかし、2人からの返事はない。何が起きているのかわからず、アレスはとりあえずセーヴィスがいるであろう建物の上層に向かった。そこで見たのは呆気にとられているセーヴィスの姿があった。そして、その視線の先にはこちらに近づいてくる2人の姿。その2人と自身の間で1人の女が立っていた。それは間違いなくパンドラであった。
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