第2話 研究所(前編)

その研究所は、領土の8割が緑に覆われた星にあった。星の名前はテーラ・ヴェール。

意図的に存在が隠されたこの星で、数え切れない悲劇が繰り返されていた。


今回の僕たちの仕事は、この星が今日までなぜ隠されていたのか、その真実を見つけること、そしてとある人物の捜索だ。

今回アレクの能力が役に立つかもしれない。でも、誰もそれを望んでいない。

だって、アレクの能力は死者を見ただけでその人の情報がわかる、というものだから。

必ず、生きている。僕はそう信じてる。


話は数日前に遡る。

ある日、1人の男が警察本部に駆け込んできた。

男は、連絡のつかない兄を探してほしいと相談に来た。

彼の兄は、「隠された星の真実を見つける」と言い、家を出た。それきり1ヶ月近く連絡がない。1度も連絡がないことで心配になったということだ。


情報が少ないため、マナカら特別事案捜査課(特事課)が動くことになった。

その星に関する情報は警察の情報網を使っても見つからなかった。

幸い、男の兄が残した資料で、5ヶ所に絞り込むことができた。1週間後、特事課はテーラ・ヴェールを特定し、その場所へ踏み込むことなった。


僕たちがテーラ・ヴェールに足を踏み入れたとき、目の前は真っ赤な炎に包まれていた。緑豊かな星とは大違いだった。

僕たち7人は建物がある方向へと向かった。

アンリさんが空からより安全なルートでの目的地案内と救出者の捜索を行った。アンリさんは色んな鳥に変身できて、泳ぎも得意なんだ。鳥なのに何でだろう。

まぁ、いいか。

向かう途中の消火活動は最低限行うことになった。鎮火は不可能と判断してのことだった。

消火活動はレナードさんの仕事。レナードさんは水を操ることができるんだ。最短ルートで行くにはレナードさんは必要不可欠。

大木が倒れ、道を塞いでいるようなら、マナカさんの出番。マナカさんはとっても力持ち。大人が10人集まっても持てないようなものまで1人で持ち上げるんだ。

僕の仕事は屋敷の主の仲介役。

屋敷というのは、事件や事故に巻き込まれた人々の一時避難先のこと。主というのは、本部に残っている同僚のレイ。彼は仲介役を通して転移魔法を扱える。


森を抜けると、そこに大きな建物があった。

しかし、その建物にはほとんど窓がなく、歪な形をしていた。人が生活しているとは全く思えない。

特事課は中の様子を伺うことにした。

しかし、それを阻む年配の男性が現れた。男性の後ろには心配そうに見つめる人々の姿もあった。


男性が言うには、内部では、周囲の火災よりも凄惨な状況になっているという。

レイの屋敷で詳しく話を聞くため、一度その場を離れることにした。


僕は皆が屋敷に入っている間、建物の監視をした。いつだれが出てくるかわからないから。

皆の話は聞くことができるため、この星で何が起きたか理解することができた。


年配の男性は、周りが話すのを躊躇う中、ゆっくりとした口調で話し始めた。

男性によれば、自分達は組織に属し、組織のために日夜研究を行っていたそうだ。それも、人体を使った悪質で非合法なもの。その事実が表に出てはいけないため、幹部の能力によって存在が隠されていた。

数日前、突然外部の者がやってきたらしい。おそらくは今回の相談者の兄であろう。

彼はほとんど何も持たず、どこから来たかわからなかった。何も聞き出せないまま、彼は事故で死んだ。

当時、研究所内で問題が起こり、その事実を組織へ連絡するのが遅れた。組織は研究所の存在が外へ漏れるているとし、研究所自体を無かったものにしようとした。それが今回の大火災と研究所内での大虐殺だという。

全て1人の幹部によるものであった。

男性の話を聞く限り、かなり大きい組織だと想像できる。幹部の1人を捕まえることができれば、組織の壊滅に1歩近づくだろうと考え、内部に潜入することになった。

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