第10話 変化
パンドラはテーラ・ヴェールでの出来事を報告すべく、本部へ帰還し、すぐさまセーヴィスのいる広間へと向かった。彼女は今、どんな表情をしているだろうか。死への恐怖か、それとも・・・
帰還が遅くなったことにより、広間には幹部も数人集まっているだろう。恐怖で前に進めなくなりそうだった。まだ、間に合う。今から引き返して逃げることも。いやそれはできない。今の組織なら見つけることも容易い。逃げれたとしても、行く場所なんてない。今の私の居場所はここしかない。
彼女には1つ、気になることがあった。それはテーラ・ヴェールで出会った少年、シャドウのことだ。彼を見たとき、彼女の奥底で何かが目を覚まそうとしているかのようだった。
広間に入ると、セーヴィスが彼女を見下ろすように座っていた。彼女の予想通り、ハデスやドイルといった幹部も数人控えていた。すでに戦闘態勢の幹部もいた。いつ殺されてもおかしくない状況にもかかわらず彼女は、事の経緯を話し始めた。
彼女が話し終えると、幹部の数人が彼女に向かって攻撃を仕掛けようとした。しかし、それをセーヴィスが止めた。セーヴィスの予想外の行動に周りも彼女自身も動揺した。彼女は安堵した。しかし、それはすぐに幻だったことに気づく。セーヴィスは彼女を地下牢へ幽閉するように命じた。そこから彼女は数々の拷問を受けることになる。痛覚を極限まで引き上げられたまま、身体中を切り裂かれた。彼女の悲痛な叫びは、地下一体に響いていた。
このとき、絶望に陥ったのは彼女だけではなかった。遠く離れたリナーシタで、前代未聞の事件が起きようとしていた。
あのときと同じ、光が入らない真っ暗な部屋。少し風が吹くだけでも身体中が悲鳴をあげる。だけど、追い打ちをかけるように、身体が切り裂かれる。あまりの痛みに気を失っても、次に襲う痛みで目が覚める。あのとき以上に地獄の日々が続いた。
そんなある日、彼女は夢を見た。文明が発達する前の時代。まるで、神々に祈りを捧げるかのように2人の子供を崇めていた。2人の子供は性別は違えど顔は瓜二つだった。双子は忌み嫌われる存在、少なくともこの集落では違ったようだ。彼女はここで気づいた。この2人の顔があの少年に似ていることに。
次の日、彼女は突然記憶を取り戻した。ここは、自分がいるべき場所ではないことに気づいたが、能力も使えない今の彼女には為す術がなかった。
しかし、彼女が記憶を取り戻したことによって、時代が動き始めた。彼女がそのことを知るのはおよそ10年後のことだった。
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