第18話 セーヴィスの息子

オルコアヴァンセの幹部は残り2人。シャドウたちはそのうちの1人、彼について何も情報がなかった。


シャドウとメージュの決戦の少し前。宇宙の片隅にある小さな星。そこでは毎日のように決闘が行われていた。5年程前から行われ、1度も敗北を喫したことのない無敗の男がいた。その男が賭けるもの、それは自身の命だった。その場で相手を殺すことはしない。相手に賭けるものは金銭。しかし、受け渡しはその場ではなく、日を改めるのが彼のやり方だった。この周辺ではある噂があった。奴に負けた者は二度と生きては戻れない、見えないところで殺される、と。実際、彼との決闘に挑み敗北した者は次の日以降誰も姿を見ていなかった。日に日に、彼に挑もうとする者は数を減らしていき、彼は退屈していった。そんなある日、珍しく通信が入った。それは父親からの緊急連絡だった。何でも仲間が次々と殺され、最大の危機を迎えているらしい。彼は、そこで初めて感情を顕わにした。狂気を感じさせる程の笑顔だった。その後、彼は忽然と姿を消した。


父親の下を離れてから組織の情報は耳にしていなかった。彼が本部に着くと、辺りは妙に騒々しい雰囲気だった。父親は自室に籠ることが増え、ハデスですら手を焼いている。同時に幹部になった戦友でもあるパンドラは組織を裏切り地下牢にいる。彼にとって何もかも信じられなかった。それでも彼は自身の役目を果たすため行動に移した。少しでも組織に害がある者は容赦なく殺した。噂程度の話でも徹底的に調べあげ、黒だとわかるとすぐに始末する。だが、それはシャドウたちの耳には入っていなかった。

それから月日は流れ、再び父親から連絡が入った。今回は、残る幹部全員の招集だった。しかし、この時既に幹部は彼とハデス、メージュだけだった。


彼は本部に戻ったが、メージュだけが現れなかった。しばらくしても戻ってこなかったため、3人で話し合った。1週間後、不安になった父親が彼と共にメージュの元へと向かった。しかし、事は既に終わったあとだった。父親の見たこともない姿、叫びは彼の心の奥底に深く刺さった。彼は懸命に手がかりを探した。能力のリミットが近く少ししか発動できなかったが、それで見たものは大きなものだった。1つは何かを隠すメージュの姿、もう1つは少年が呟いた︎︎ ︎︎ ︎︎"パンドラ"という言葉だった。メージュが隠した物は彼では開けられなかったため、父親に託すことにした。そして、少年の言葉を確かめるため、彼はパンドラに会うことにした。

一方父親であるセーヴィスは、メージュが遺した物、とある研究のデータを解析し始めた。もし、これが完成すれば、まだ見ぬ敵を全員打ち倒すことができる。崩れかけた組織がより強固なものとなり復活することができる、セーヴィスはそう確信した。


およそ1年後、オルコアヴァンセによる反撃が開始。歴史上、類を見ない長い戦いの始まりだった。

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