第6話 襲撃
特事課がテーラ・ヴェールから帰還した。その後、彼らは休むことなくあの組織について調べ始めた。
シャドウはあの日以降、1度も仕事に来ていない。研究所での様子を見ていたマナカには、ある程度予想ができた。だからこそ、そっと見守ることにした。
彼女が彼女じゃないと知り、僕はどうしたらいいかわからなくなった。唯一残ってた記憶は、彼女のことだけ。彼女とまた会うためだけに生きてきた。でも、彼女は僕を知らなかった。僕は生きる意味を見失いかけていた。
そんなある日、ふと思った。なぜあのとき彼女は僕達を殺さなかったんだろう。機会はいつでもあったはず。なのに、僕が話しかけたあとから彼女の様子が変になっていった気がする。もしかしたら、彼女の内側で何かが反応したのか。その真相を確かめるため、僕は彼女にもう一度会いたいと願った。
それからの僕は今まで以上に、仕事に邁進した。
ある朝、目が覚めると外がやけに騒がしかった。何事かと思い、窓の外を見ると、巨大な龍が空を飛び、龍の通った所では煙が上がっていた。僕はとりあえず本部へと向かった。
朝日が昇りきる前、彼ら3人がやってきた。最凶の悪魔として。彼らはオルコアヴァンセと名乗った。1人は地中から、1人は巨大な龍となり炎を吹き出して街を破壊していった。リーダーと思われる人物は2人が開いた道をゆっくりと歩いていた。彼らの進む先にあるのは特事課がある本部だった。
そうとは知らない本部では、対応に追われていた。しかし、特事課はまだしも、半数以上は実戦経験がない。それに加え、外部から攻撃されるという前例がなかった。
本部へと向かう道中で見る街は昨日までの美しい面影が無くなっていた。この街は、住む人々は僕が守らないと、そう思った時突然地面が膨らみ、僕は吹き飛ばされた。あまりの痛みにすぐに立ち上がることができなかった。やっとの思いで起き上がると、目の前に大柄な男が立っていた。
「特事課っているのは、こっちで合っているか」
男はそう話し、僕の目をじっと見た。
こいつは、僕たちに用があるのか。でも、街を破壊してまで訪ねてくるとは、何の用なんだろうか。
「早く答えろ。俺は待たされるのが嫌いだ」
特事課はこの先だと言うと、そいつは「そうか」とだけ言い、本部へと足を進めた。しかし、そいつは思い出したかのように振り向き、僕の首を掴み地面に引き込もうとした。
「お前にここにいられたら困る。ドイルさんが通れねぇ」
僕は痛む体に鞭を打ち、必死に抵抗した。地面に引きづり込まれる瞬間、後ろから制止する声が聞こえた。
そいつは僕の首から手を離した。しかし、状況は最悪だった。目の前の奴より後の奴のほうが遥かに強い殺気を放っていた。おそらくあいつがドイルだろう。ドイルはゆっくりと僕に近づいてくる。恐怖で足が震えた。前にも後ろにも逃げられない。このまま死ぬのか、頭の中がパニックになりかけたとき、頭上にソレファスさんが現れた。
一方、本部では未だに混乱の渦中にあった。
マナカら特事課が中心となって、情報の整理、敵への対策などを練っていた。しかし、それぞれに指示を出し行動させるのは至難の業だった。
その時、小さくも地の底から響く声が聞こえた。その声の人物は、表舞台から身を引いた大西だった。大西の一声で辺りは静まり返った。大西は、前職の経験もあり、的確な指示を飛ばし、それぞれに役割を持たせたのだ。大西の指示で全員が動き出した。
マナカらは、大西に一礼すると、街へと急いで向かった。
一足先に敵を見つけたアンリに乗り、ソレファスがシャドウの元へ駆けつけた。アンリから飛び降りると同時にドイルに剣を振るった。しかし、それはあっさりかわされ、ソレファスは遠くへと蹴り飛ばされた。その後を追うように大柄の男が地面に潜っていった。
ソレファスさんが遠くへ蹴り飛ばされてしまった。ソレファスさんのことだから大丈夫だろう。でも、今は人の心配をしている訳にはいかない。目の前にはドイルがいる。戦う能力を持たない僕にとって、死ぬかもしれないという状況は変わらなかった。
だけど、事は思いもよらない方向に動く。この後、ドイルから聞いたのは彼女のことだった。それは、耳を塞ぎたくなるような話。
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