第13話 影の一族の力

パンドラが数々の拷問を受け続けていたある日、彼女は自身の記憶を取り戻した。自身の出生から、出会った全ての人達の顔も事細かに思い出した。しかし、それだけではなかった。彼女が数日前から見ていた夢、古の時代から存在した双子の存在。これは、自身の先祖だとはっきり思い出したのだ。


今の私には何もできない。でも、全てを思い出した。彼のことも。彼の名前も知らないが、小さい頃の私に似ている。おそらく、彼が私の内に誕生した存在。だから、あのとき涙を流していたんだと思う。

もし、まだ私のことを諦めていなかったら探し出してくれる。そう信じたい。そして、今の彼には最強の人達が味方してくれているはず。だから、私は諦めない。自身の役割を全うするためにも。


それから数日後にリナーシタは襲撃を受けた。たった3人に手も足も出ず、特事課の全員が死ぬ覚悟をしたとき、戦況は一気に変わった。

眩い光のあと、オルコアヴァンセのメンバー2人がほぼ同時に倒れた。その数分後、幹部であるドイルは腹に剣が突き刺さっていた。このとき、ドイルは不思議に思った。なぜ、心臓を貫かれた訳ではないのに回復しないのか、と。ほとんどの能力者は心臓や頭を貫かれるか、首が飛ばない限り死ぬことはない。それ以外に受けた傷は治癒能力によって大事には至らない。しかし、ドイルは腹の傷が癒えることはなく、血も止まらなかった。彼は倒れたまま動けなかった。死ぬ恐怖もほとんど感じることなく彼は息絶えていった。


ドイルに殺される。咄嗟に目を閉じてしまったが、痛みを感じず目を開けると、なぜかドイルが血を流していた。その後ろに、刺したと思われる人物が立っていた。その後ろにさらに3人の人物がいた。彼らは、僕と目があった瞬間、全員が頭を下げ、謝罪した。僕には何のことかわからなかった。


シャドウと彼らの会話が始まる前に、マナカやソレファスが駆けつけた。2人がシャドウの奥にいる4人を見るや否や銃を構えた。シャドウは咄嗟に弁明した。しかし、シャドウにも詳しいことがわからないため、本人達に説明を求めた。

彼らは、影の騎士団と名乗り、味方だと主張した。長の影光は時間がない、と言い詳しいことは後にしたいと願い出た。

彼らから敵意を感じないことがわかったマナカは、それを了承し、彼らに任せることにした。


その後の彼らの行動に全員が驚いた。

騎士団で唯一の女性、來闇は、シャドウやソレファスの傷を治してくれた。その後、弟子である夜鴉を連れどこかへ行ってしまった。影光が言うには、傷病者の手当てに行ったらしい。しかし、彼は死んでしまった者は生き返らせることはできない、と申し訳なさそうに言った。影光の部下、朔は祝詞を唱え始めた。すると、燃えて灰となった家々は元通りとなり、地面に空いていた穴も全て塞がっていた。日が沈みかけた頃には、すでに街の復興は終わり、避難していた住民も元通りの生活を送れるようになった。犠牲になった人々や殉職してしまった人達の埋葬も素早く丁寧に行われた。


次の日から特事課やそれぞれの責任者が集い、影の騎士団との会合が始まった。

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