第12話 古の一族

古の時より彼ら一族は存在した。彼らは双子の存在を何より尊重し、崇拝してきた。その中でも、一卵性であり、性別が異なる双子が誕生した場合、世界はより良いほうに向くと言われてきた。

その双子を守るのは影の騎士団と呼ばれる人達だ。6人の精鋭で構成され、いつの時代も双子が死ぬその時まで守ってきた。

時代が進み、いつの日からかその一族には双子が全く誕生しなくなった。崇拝する対象が無くなることは、一族の衰退を意味していた。しかし、ごく一部の人間しか知らない事実があった。それは、1人の子に2つの魂が存在する。現代でいう二重人格者のようなものだが、異なる点が1つ。それは、お互いの人格は干渉しないということだ。つまり、内に生まれた者は内に、外で生まれた者は外でしか存在しないのだ。

しかし、外の者が内に存在する者を認識し、受け入れた時、2つの魂、肉体は別れ、別々の人間として生きることができる。


代々受け継ぐべきことだが、いつの頃からかその事実を知る者が少なくなり、その一族は新たな世界に適応するため各地に散らばった。一方で、その事実を唯一知る影の騎士団は自ら口を閉ざし、世界の均衡が崩れるその時まで身を隠すことにした。今後、また双子が誕生し、外に生きる者が一族のことを思い出したとき彼らは再び目覚め、騎士団としての役目を全うすると誓った。


長い年月が経ち、地球という星が生まれ、そこを永住の地とした一族の末裔がいた。彼らは誰も内なる存在に気づくことはなかった。ただ1人その存在に気づきかけた者がいた。彼は、よく1人で話すことが多かった。もちろんそれは、彼の内にいる存在と会話しているということだが、周りからすればそれは異常と捉えられる。小さいながらも周りの反応から何かを察した彼は、その存在を忘れることにした。彼はその後、立派な警察官となり、職場で出会った女性と結婚、2人の間に女児が誕生した。その女児は最初こそ変化はなかった。しかし、10歳を過ぎたあたりから異常な言動が目立つようになった。それは、当時の彼よりも酷いものだった。その後しばらくして彼女は行方不明となった。

しかし、このとき思いもよらない出来事が起きた。それは、彼女の内にある存在が、彼女から離れ1人の人間として生まれたのだ。通常はありえないことだ。彼は子供の姿のまま心だけが成長していった。加えて、記憶を無くした彼は、遠い別の星へと移動していた。そこに住む人から名前をもらい、シャドウと名乗るようになった。

これも何かの縁であろうか。彼は一族の末裔。影の騎士団を使役し、国や民を守ってきた、影の一族。その一族にふさわしい名で彼は己の人生を歩み始めたのであった。

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