第23話 明るい未来へ

レナード、アンリ、アレク、レイ、4人のメンバーがこの世を去った。一度は敵を退けたシャドウたちであったが、その被害はとても大きく、すぐに体制を立て直すのは困難であった。追い打ちをかけるように何度もなく襲撃を受け、次々と仲間が倒されていった。死を恐れて、任務を放棄する者も現れ、組織には統率力がなくなっていた。

今までが順調すぎたのだ。先を見通し、対策を練り、強力な敵でも次々と倒していけた。しかし、今では影光ら騎士団が、いつどこから敵がくるのか予見しようとしてもそれも通用しなくなっていた。


5年が過ぎた頃には、マナカ、ソレファス、影光、朔、そしてシャドウ、数百人いた大きな組織はたった5人まで減っていた。さらに、今まで存在を隠していた特事課がある星、リナーシタは突如として消息を絶った。後ろ盾もなくなった5人では、拠点を守ろうにもそれも困難になり、戦うことを回避すべく移動を繰り返し、星々を転々としていた。


一方、オルコアヴァンセ本部では、パンドラが数年ぶりに暗い地下牢から解放された。信頼を失った彼女であっても、その血さえあれば組織に貢献できるためだ。更なる力を手に入れ、世界全体を支配する計画が動き出していた。

半ば裏切りを行なったパンドラを自由にする訳はなく、地下牢にいたときと同じような状況は続いていた。しかし、ここの明るさは地下に比べると天と地の差がある。ここで毎日のように監視がつき、必要なときだけ血を大量に採られ、その度に酷い疲労感に襲われていた。

アレスは薄々気づいてるかもしれないが、彼女は全ての記憶を取り戻した。何が悪で善か、今の彼女にはそれがはっきりわかっていた。オルコアヴァンセを内部から崩壊に導こうと密かに考えていた。

そして、ある時から彼女は自身の血に毒物を混ぜた。その血で強化された人間を内側から壊せるよう作られたそれは、一種の時限爆弾だった。


それから、さらに5年が過ぎた頃、多くの犠牲を出しながらもシャドウはオルコアヴァンセの本部へとたどり着いた。彼の隣にいたのは影光ただ1人だけだった。2人の目の前には、強化された戦闘員が辺りを埋めつくし、彼らの遥か後方にハデス、アレス、そしてセーヴィスが佇んでいた。3人の表情は確認できないが、おそらく余裕の笑みでも浮かべているであろう。


シャドウたちに待つのは死だけ。誰が見てもそう思うだろう。しかし、2人は背を向けることはなかった。死んだ仲間のため、この先にいるであろう彼女のため2人は敵の中へと走りだした。


世界の命運を決める最大の戦いが始まった。

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