第8話 彼女の過去

目を覚ますと、真っ暗な空間で1人、身動きも取れずにいた。それまでの記憶が全くなく、恐怖と不安で押しつぶされそうだった。すると、一筋の光が差しこみ、誰かが入ってきた。その人はドイルと名乗った。彼は私を「214番」と呼び、「仲間になれることを祈っている」とだけ言い、その場を立ち去った。


ドイルと入れ違いになるように、2人の人物が彼女のもとを訪れた。そのうちの1人は、オルコアヴァンセの幹部でメージュと名乗った。メージュは彼女と変わらない見た目をしているが、多くの星を討ち滅ぼした実力者だ。メージュは、セーヴィスにも負けず劣らずの頭脳の持ち主である。彼女は1度見た人物の思考を読み取ることができる。セーヴィスの指示のもと、彼の思考を読み取り、今ではセーヴィスに代わり、研究の責任者となっていた。


彼女と彼女の部下に連れられ、彼女はその場を後にした。監視の目が行き届いたガラス張りの部屋で、彼女の地獄の日々が始まった。


214番、そう言われたときから嫌な予感はしていた。案の定、私は厳重に拘束され、毎日のように痛みに苦しんだ。何度死にたいと思ったか、何度殺してほしいと願ったことか。それでもその地獄の日々は終わらなかった。


あるとき、彼女が2度目の暴走状態に入った。幹部であるメージュが不在の中での出来事だった。幹部程ではないが、実力がそこそこある者たちが抑えようとしたが、ことごとく失敗に終わり、数人が命を落とした。騒ぎを聞きつけたゼウスが迷いもなく彼女に向かい、攻撃を放った。能力者として完全ではなかった彼女は、ゼウスに勝てる訳もなく、すぐに拘束された。

彼女につけられた傷のほとんどは治したが、右目の傷だけは残された。誰にも治すことができないように一種の呪いがかけられているかのようであった。


彼女がオルコアヴァンセの幹部となってから、世界は恐怖で支配されるようになった。火、水、雷、氷、様々な能力を使い、宇宙を滅ぼさんとするその様は、まさにパンドラの箱が開け放たれたかのようであった。いつしか、彼女自身もパンドラと名乗るようになった。


そんなある時、ある研究所がミスを犯し、その報復として星ごと消滅させるように、という命がおり、その実行者にパンドラが選ばれた。


その星で彼に出会ったことより、彼女もまた、自分の生きる意味を見失うこととなる。そして、新たな地獄の日々が彼女を待ち受けているのであった。

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