夢の舞台へ、三期生集合配信です!!
#17 夢の2Dモデルです!
「花鈴ーー、荷物が届いてますよーーー」
それから数日後、花鈴は入学式を終え、高校生活を楽しんでいた。連絡先の交換を
するのを忘れてしまっていたので、時折「愛ちゃんやユイちゃんは元気かな」と
思っていた。そんなある日の休日、自室の部屋をノックして、母親が来た。
「荷物?」
「えぇ、{flowerアレジメント}からですって。花鈴が入る事務所だったわよね?」
「うん」
一体なんだろうと思い、玄関へと向かう。水色の無地服を着た女性が花鈴を見ると、
印鑑を押す紙と共にダンボール箱を差し出した。結構大きい段ボールだ。
「ここに印鑑を」
「は、はい!」
あたふたしながら印鑑を押し、荷物を受け取る。ありがとうございましたー、と、
女性は次の配達の仕事をするために走っていった。
「何が入ってるんだ?」
「わからないけど、おっきい…!」
父親の助けを借りて、なんとかリビングの机に置く。ダンボールは花鈴の腕一本を
思いっきり広げたぐらいの長さで、高さは一般的なストーブぐらいだろうか。
「えーっと…これ、機材?」
ダンボールを開けて中に入っていたのは、マイクだった。緑色のマイク。これは
おそらく、Vtuberの配信用マイクだ。
「マイク…」
「お?花鈴がとうとうデビューか!」
「あなた、まだ喜ぶのははやいわよ、夢が叶ってからよ」
二人に夢を話したのは運営がオーディションについてのお知らせを受験の時に
Suifishで出した時だ。二人共驚いていたが、夢を否定せず、
『予定日は受験が終わった後でしょう?今は受験を頑張って、高校ライフをつかみ取ってからやりなさい。そうすれば高校もそのばーちゅーばーも充実するわ』
と、花鈴の幸せも考えて受験についての話をしたうえで、賛成してくれた。本当に、
感謝しかない。機材をとりあえず机の上にだす。家電を扱う専業主婦の母親は
ともかく、父親は機械音痴だ。そのためマイクを見て「何に使うんだ?」と
呟いている。ダンボールからマイクを出すと、その下に一冊の本と手紙が入っている
ことに気付いた。
「手紙?本は…」
不思議に思って先に本を手に取る。表紙には何も書かれておらず、白い。中を
めくると目次がかいてあり、「2Dモデル一覧」・「マイクの使い方」と書いて
あった。しかしそれだけではない。何より驚いたのは……
「え、えええええ?!る、るるる、月さんの直筆サイン?!?!?!」
目次の次
入っていた透明の袋がついていた。震える手で袋からサインを出す。月のサインが
コピーされたものではない。この色紙を月が触って、サインしたのだ。
「るなさんって…花鈴が憧れてるばーちゅーばーよね?」
「うん、うん!!!」
「憧れの人からサインか、いいなぁ…父さんも昔、大好きな野球選手からボールにサインを書いてもらったぞ。喜びはよーくわかる。」
花鈴の肩をたたきながら、父親は笑う。花鈴はサインをキラキラとした目で見つめて
いたが、後で部屋に飾ろうと一旦机に置き、本の続きを読むことにした。
2Dモデル一覧ということは、「乙葉叶希」の姿がついに分かるということだ。
1P、2P、とめくって、9Pに「乙葉叶希」という文字と共に、イラストが描かれて
いるのを見つけた。
「これが、私…」
パッチリとした蜂蜜色の目、白い髪の毛が目をひくおさげ。おさげがきっと、花鈴と
しての名残なのだろう。おさげの先っぽは黄色いグラデーションになっている。
白い半袖のブラウスの上に緑茶色の薄い布が上着のように二、三枚重ねっており、
中央には黄色くモフモフしてそうな丸と、そこから伸びる若緑色のリボンがあった。
そしてスカートは黄色で、その上には薄緑色の布が何枚か重なっている。
白い靴下の上に、濃い緑色で出来たロングのグラディエーターサンダルを履いて、
おさげにはカモミールの髪留めがついていた。そしてリンゴ型の赤いポシェットを
肩からかけている。
「可愛い…!」
「これがばーちゅーばーとしての、花鈴の体なの?可愛いじゃない!」
「すごいな、今はここまで来ているのか。俺はもうコンピューターですらダメだからな……。」
ははは、と苦笑しながら両親はそれぞれの仕事に戻る。娘の活動姿になるイラストが
見られて満足したのだろう。9Pには前向きのイラストが、10Pには後ろ向きの
イラストが。11Pと12Pにはイラストの表情が描かれているどうやら2Dモデル一体に
つき、4Pを使っているようだ。それから何枚かめくると、マイクの使い方だ。
これは部屋でやらなければならないので、もう一度ダンボールに入れ直し、本と
手紙、サインを大事に持って部屋へと移動する。
「手紙は…金華さん、からだ」
封筒に金華の名前が書かれており、封筒を開ければ白い紙。文字がずらーっと
書かれており、花鈴はそれを読み始めた。
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