#7 まさかのサプライズ配信です!

「すごい、ツバキさんだ、本物だ……!」



花鈴が驚くのも無理ではない。


「ツバさん」、「ツバくん」、「カンニキ」、「ツバカン」、「ツバキゅん」。

様々なあだ名を持つ一期生の「カンツバキ」は、

白色のパッツン髪に黒色のマフラー、灰色のどてら、白のセーターが特徴の

男子Vtuberだ。本人が言っている通りゲーム専門のVtuberで動画配信はゲームのみ。

しかもその配信が不定期のため、

「神出鬼没」、「真冬の幽霊」…とも言われている。


そんな彼が今、月の配信にいる。



『いやーね、新季そうそうホラーゲームをやってみたらどうなるかなーって。』

『ワー、ツバキクンヤッサシイナー、ボクダッタラゼンゼンオモイウカバナイシカンガエラレナイシカンガエタクモナイヤーーーー』


・く、ツバキ様の笑顔が眩しい…![\30000:持ってけドロボー、さんから]

・月さんがw棒読み体制にw

・これは、すべてを諦めてるんだな、月ちゃん……。

・久しぶりに「ボク」って言ったな。二回連続配信でお久なものが見れて最高です。

・何気に「考えたくもない」って言ってるのワロタ[\1000:プギャー、さんから]

・「花の姫君」月様でも、「氷の王子」ツバキ様には勝てなかったか……。

・しかもホラーゲームって、月が嫌いなヤツやんけwww


『大丈夫ですよ、ご安心ください。今回は優しいフリーホラーゲームなので』

『何を、何をやるんだよぉ、笑顔が怖いんだよぉ…!』


・ツバキゅん、一体どんなこわ…ゲフンゲッフン、美しい顔をしておられるのか。

・さすがよツバキゅん、リスナーのHPはもうゼロだ[\8000:最後の資金、さんから]

・月さんが怯えてるじゃないですかwww


『えー、今回やるのはですね、「キオクの眠る部屋」というフリーホラーゲームです!今回はコワァーイのが苦手な月さんのために、“”怖くないフリーホラーゲームを用意しました!!』


・さっすがツバカン、ヤッサシー

・おいおいおい、それはヤベェぞツバキ。

・結局鬼畜ゲームじゃねぇかwww

・[\3000:鳥依代、さんから]

・確か「キオクの眠る部屋」って、そのトゥルーに行くのがムズイんだよな

・トゥルー以外がある種のホラーだからフリーホラーなんだぜ……。

・こやつ、見る目がある


『ねー、ねーねーねー。私のHPがないんですど…ツバたろが液タブペン持ってるんすけど?!何で?!?!』


・出た、月様にしか喋られない「ツバたろ」!

・一般リスナーが言ったら前回メッタ刺しにされたな

・これは…月さん脅迫されてんなw

・「ッス」口調は一昨日ぶりだな。これは余程焦っているのか……。


「見て海里ちゃん!ツバたろだよ!!」

「えぇ、聞いていたわ……。」


月だけが言えるらしいツバキの愛称、「ツバたろ」。これは本人が嫌がっているため

一般のリスナーが言った場合ツバキが氷のまなざしになり、配信をぶっち切り、

リスナー全員にメッタ刺しにされるという実は結構ヤヴァイ名前だ。月だけが言える

のはおそらく、持ち前の明るさからツバキも気を許しているからだろう。


ちなみにツバキが仲間を脅すときは笑顔とその場にある凶器っぽいもの

(液タブペンや定規、ハサミ、シャーペンなど)を持って威圧する。


『よーし!さっさとやれば怖くないです!!』

『待って待って待って。なんかコメントで「鬼畜」とか「ムズい」とかあるけどぉ?!』

『大丈夫です、死にはしませんよ』

『私のHPハートが死ぬんだよぉ!!!』

『文句言わずにさーやりますよーーー。』


そう言うと同時に、配信画面が切り変わった。ゲーム画面になっている。青い本が

開かれており、上に白い文字で「キオクの眠る部屋」と書かれている。そして青い

本の白いページの上に、


「はじまり」

「つづく」

「おしまい」


と書かれており、ツバキに促されて泣く泣く月は「はじまり」を押した。



“……あと一回だけ、だから。”



ゲームが始まると同時に、物語の主人公らしき少女がそう口にする。


『…あ、動ける。OPあれだけか』

『意外とマップ狭いでしょう?』

『これ誰かに追っかけられるとかあったら死ぬぞ。外出られないし物多いし、何しろ逃げ道一本しかないし』

『そういう追っかけ要素はないので、ご安心なく』

『うぅ、誰か私に希望をくれ……。』


・頑張ってください、応援してますよ![\6400:ハピエールくるたん、さんから]

・ガチの“希望”来てんのワロタw

・ガーベラは“希望”だもんね

・くるたん見てたのか!


『ありが…とぉ?!え、あ、あ……“錠剤”?!』

『あ、拾いました?』

『待って、アイテム欄…ヤベェじゃん』



【アイテム:錠剤(睡眠薬)】


眠れなくなった私のための薬。本当は寝たくないけど、寝ないと倒れちゃうから。

別に、永遠に不眠でも良いんだけどな……。最近、容量が多い気がする。



『容量多いって薬に慣れると効かなくなるからだとお姉さんは思うんだよねぇ?!』

『ほらほら進める』

『え、あ、待って。―――あ』

『あーあ、外出ちゃいましたよ』

『待って待ってまだベッドと本棚しか調べてないの。青い本あったから調べたかったのに……』


・錠剤を拾った後ドアを調べると出ちゃうぞ

・安心してくれ、錠剤を拾うイベントじゃ青い本を調べても何も起きないぞ

・まだまだ続くよどこまでも[\3000:けものみち、さんから]

・確かに何も起きないけど、物語においては意味深な発言を主人公がするから或る意 

 味重要かもね。[\1000:get、さんから]

・でもまぁ先に進めば別にそれに気付かずとも全部説明してくれるから[\1000:get、さんから]


『あ、そーなの?』

『よそ見しない。今からバッドへの分岐が始まりますからね』

『ヨーシ、チョックラオハカデモカイニイコウカナーー』


「月ちゃんが壊れた!」

「あらら…。こら花鈴、お茶こぼさないの。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る