#13 一緒に頑張るんです!

『へー、“叶える希望”で叶希かのんねぇ。いいんじゃない?』



名前と担当花が決まったため、2Dモデルが完成するまでは待機だ。そのため自宅に

帰り、今日あったことをさっそく海里へと話した。


「うん、とっても楽しみだよ!海里ちゃんはどう?音楽の専門学校、始めたんでしょ?」

『こちとら万事順調よ。新しい友達も出来たし』

「あー、私そっちのけ?!」

『あははは!そんなわけないじゃん、大丈夫だよ大丈夫!!』


ガーン、という顔をした花鈴に電話越しで気付いたのか、海里は笑いとばす。


『ていうか、その凛って子、カンジ悪いよねぇ。その愛さん、だっけ?とか、ユイさんが言ってたこと、正しいと思うよ。夢は理想。理想は儚いもの。叶うかわからないけど、そんな未来があったらなって、人間が求めるものなのに』

「ふふ、ありがとう。」


はぁ、とため息をつきながら海里は自室でカリカリと作詞を続ける。ついさっき

一枚目が書き終わって、今やっと二枚目だ。明日はその友達とあわせたりして、

手直しをしていく。


『何はともあれ、私は運営からのPVを楽しみにしているとするよ。お互いこれから忙しくなるし、連絡は取りづらくなるだろうけど…。』

「そうだね。その間に私、海里ちゃんが他の子に取られないか心配だよー」

『それは私もだよ。愛さんやユイさんに花鈴がとられたら嫉妬しちゃうかも?』

「ないから大丈夫だよ。」

『じゃあ別々の道でも、頑張ろ?』

「もちろん、一緒に頑張るんです!」


ははは、と二人で笑い合い、それからしばらく語り合う。そしてもうすぐ月の

配信だ。海里との電話を切り、配信を待機する。



『いえーい、配信はじめるぞーー、うぇーい』


・よ、待ってました![\21000:推しの供給、さんから]

・くっそwテンションw低いなww

・ホラーゲームで心が死んでんだろうな……。

・みんなのトラウマ、前回のBADEND絵☆

・#オワタ

・オワニキww


配信を始めた月は、いつになく低テンションだった。ホラーゲームは苦手じゃない

が、見るのが好きなだけで、元々やるのはあまり好みではない。しかし今回は

ツバキにより“無理矢理”という名の配信をさせられているため、逃げ道がない。


『はい、今回も“TRUE行くまで終われません”、やっていきましょー!』

『ワーシュゴイ』


・(語彙力(語彙力))

・月ちゃん、強く生きれ……

・まぁ、BADにどうやって行くかを気付いたらカンタンなことだな


『あぁ、アレ、ドア調べたらダメだったんだよね?最初の一回は調べられたんだけど、二回目から出ちゃって……。』

『おしお。さんいわく、そういう仕組みにしてるそうですよ。BADにいきやすいように』

『無慈悲じゃん』


・がんばw

・おしお。さんの鬼畜ゲームはこれだけじゃないからな、ストーリー最高だけど

・[\1000:ハタハタ、さんから]

・今回はHAPPY行くか?TRUE行くまでって言うと、行っちゃうと逆に配信終了な

 気がする…。

・いっそのこと全エンディング回収しちまえよ[\4000:テイル、さんから]


『あー、そうします?』

『うぐ、気になると言えば気になるから、行ってみるか…。えーと、セーブデータは……12だな。こまめにセーブしすぎててワロえない』

『そこでBADでしたよね。じゃあ押して、今度はBADへ行かないよう頑張りましょう』

『泣くぞ』


そう言いながら配信画面では月の操作するリンが部屋の中を調べていく。部屋の中は

ベッドが三つ、椅子が三つ、日記、紙の山、散乱したメモ、羽ペン、カーテン、

ドア、本棚。そして一個前では錠剤があった。


『えー、一回目調べました、二回目…何にもねぇじゃん。え、まだ調べてないところ……あ!なんか出て来た!手紙?』

『お、やりましたね』


・おめでとう[\30000:ニキ、さんから]

・888888888

・フォー

・フォッフォ

・↑ちょw

・さぁ、ここからだぞ月。気を抜くなよ……

・応援スパチャしますわ[\30000:推しの推しの推しは推し、さんから]

・ここから分岐ですから気を付けて(いろんな意味で)


『これあとHAPPYとTUREだけなんだよね?HAPPYもホラーってもうHAPPYじゃない、私の知るHAPPYじゃねぇよ……』

『弱音を吐いてないで、ほらやる』

『え、でもこれ、“ベッドの下から手紙が出て来た。”で終わりだよ?手紙の内容は?!』


・あー、それ、見れないんだよ

・おしお。さんの手で見られないようになってる[\2000:get、さんから]

・って言っても、その手紙の内容は“ご想像におまかせします”らしいけど、

 アイテム欄で一応見れるようになってる[\3000:get、さんから]


『そーなの?でも想像にってことだから、結末を見てからの方が良いんだろーね……、って、あ、イベント始まった』

『ここからはセリフだらけですので読みながら飛ばしましょう。』


「頑張れ、月ちゃん!…あ、でも最初はHAPPY行くんだっけ」


かくして月による「キオクの眠る部屋」というホラーゲームの配信は、イベントへと

移行していく。

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