#4 通知です!

「……ん、」



翌日の朝。とある家の一室で、スマホから一つの着信音が響く。その音に

気付いた花鈴はベッドからのっそりと起き上がり、寝ぼけ眼で座っていたが、ハッと

すると、慌ててスマホを取った。


「も、もしもし!」

『あ、もーしもーし。……って、花鈴、寝起き?声枯れてるよ?』

「うん、寝起き。昨日寝ちゃったみたいで…って、あ!月ちゃんの配信見るの忘れてた……!」

『あー、やっぱり?どうりで昨日いないなーと思ったんだよね、月さんの配信。アンタ結構あそこじゃファンの中で有名だから「死んだのか」とか言われてたよ』

「い、生きてますよ海里みさとちゃん!」


慌てて花鈴が言うと、電話の向こうの相手…親友の海里はけらけらと笑う。

歌代海里うたしろみさとは、花鈴の中学時代からの親友だ。現在は音楽高校に行ってしまって別々の

高校だが、今でも連絡を取り合い、会っている。


そして、花鈴は月の配信によく顔を出しているため、ファンの中では有名人なのだ。

海里も月のファンであり、そしてとうとう月にも覚えられて名前を初めて出された時

には数秒時が止まった後数分発狂し、数時間海里に電話、そこから自慢話が数日

続いた。


『はいはい、知ってる知ってる。きっと昨日のオーディションで緊張して疲れ経ったんでしょ?…ところで、通知届いた?今は11時だけど……』

「通知…あ!まだ見てない!!」


慌てて耳からスマホを離し、通知メールを確認する。


「あった、一件……!」


そう言うと、震える指で<開く>を押した。




【円華花鈴様


この度は{flowerアレジメント}主催の“三期生オーディション”にご参加いただき、

誠にありがとうございます。当事務所の社長鳳蝶金華と数名のスタッフの会議にて

慎重に話し合いをした結果、貴方様は


                   合格                


とさせていただきます。つきましては明日の午後2時、{flowerアレジメント}に来て

いただきたく存じます。具体的には三期生との顔合わせなどをする予定ですので、

ご出席・ご参加ください。他の予定がある場合は、至急こちらまで

電話してくださいませ→0120-×××-○○○○】




「や、やった……!私、合格した!合格したよ海里ちゃん!」

『うっそぉマジ?やったじゃん!おめでとー!!よし、今日は外食だ!私が奢ってやる!』

「いいの?わーい、じゃあお寿司食べに行こ―!!」

『う、うん。じゃあ19時ね。家で待ってて。迎えに行くから。(誘ってなんだけど遠慮がないなこの子……)親の許可は?』

「大丈夫、今日は両親が夜遅くまでいないから!じゃね、バイバーい!!」


そう言うと花鈴は上機嫌で電話を切り、まずは両親に連絡をする。家族チャットに

今日海里と外食をすることを伝えると、少し後に既読がついて、OK!のスタンプが押された。そして外食時の服を決め、外食時のために朝食を軽めに食べる。そして

歯磨きをし、髪を結びなおしてベッドにダイブした。服は昨日、帰って来た時の

ままだ。きっと月の配信を待っている間に寝てしまったのだろう。


「配信♪配信ー♪」


ふふふふーん、と鼻歌を歌いながら動画配信アプリ「WorTubeワーチューブ」を開く。

名前の由来は「World(世界の)」「Tube(ブラウン管(テレビ))」だ。そこから

“好きなチャンネル”欄をタップし、一番上にある桜羽のチャンネルを押す。

すると新着欄に「【今日でした!】三期生のオーディションについて」と書かれた

動画がある。


「三期生のオーディションについて?!やった、見てみよ!!」


興奮気味に押した花鈴は、動画が始まるのをワクワクと待つ。



『へーい、皆こんばんは!桜羽月でーす!!』


・どうも~

・こんばんは!

・月ちゃんだー!

・推しが生きてる……[\10000:供給サイコー!、さんから]

・お、さっそくスパチャするか[\30000:推しの推しの推しは推し、さんから]

・三期生についてだよね。確か今日オーディションだったんでしょ?


『ん、そうですよー。今日はVTuber全員がこの配信をするんだって、社長から言われたん。一部嫌そうな顔してたけど』


・あー、誰だか察したわ

・くるふくちゃんですね分かります[\2000:ガチの推しマン、さんから]

・くるふくたんかwあの人はマイペースだからなww

車福くるふくちゃんだけじゃなく、多分ヒマさんもだと思う

・お、ヒマグラさんか

・ヒマグラさんw出たなあだ名www[\10000:ことある、さんから]

・本名ヒマ・ヒマワリでしょ?グラサン頭に乗っけてるからヒマグラさんって言われ  

 てる、リスナーたちの愛称。

・お、詳しいな。さてはお前、リスナーだな[\4000:頭乗っとけ、さんから]


『うん-。うんうんそうそう、くるふくちゃんとヒマグラさん!よくわかったね』


・いえいえそれほどでも

・褒めるなよ、照れるだろもう結婚しようぜ[\30000:会場はここに、さんから]

・↑おい何赤スパチャして籍入れようとしてんだ俺もだよ[\30000:ヘイ、さんから]

・おまいら落ち着けwww

・月ちゃんは皆の…いいや、唯一無二のアイドルだぞ[\30000:ランダム、さんから]

・くるふくちゃんとヒマグラさんはマイペースだし、自由愛好家だもんね。急に命令 

 されたら自分がやりたい企画後回しになっちゃうからねぇ。

・今見て来たけど、ヒマグラさんテンションひっくw

・マジか、見よ[\20000:一期生全員推してます、さんから]

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