#14 全END回収です!

『うわぁ、すっごぉく良い妹じゃん……。』


配信ではイベントが発生し、主人公であるリンが手紙を見た後、日記を開くという

シーンになっていた。しかしこの日記の中が涙腺崩壊につながっており、

「神ゲー」と呼ばれる理由の一つだ。


“姉さん、大丈夫なの?そんな大怪我して…”

“うん、もう一、二週間したら退院できるよ”


“やりました、頑張りました!お姉ちゃん!!”

“どうしたの?”

“医師免許、取ったんです!夢に近付きました!!”

“いいじゃん。私も「世界を旅したい」って夢に向かって頑張らないとね。姉さんは、何か夢ある?”

“私は特にないかな”

“えー、何言ってんのこの美人姉め。”


『これアレじゃん、完全に死亡フラグたてた幸せ日記じゃん…!』

『ゲームでのあるある系ですね『あるある系言うな』』


・泣かせんじゃねぇよ…![\3000:ヤミヤミヤミ、さんから]

・く、目からダムが……

・ツバキゅんwメタいってwww[\4444:ランラン、さんから]


“お姉ちゃん、お姉ちゃん!”

“どうしたの、いきなり。ここは病室だよ”

“違うの、ティアお姉ちゃんが!”


『あ、次女ティアって言うのね。第一被害者じゃん?!物語で最初に死ぬ妹かよ……』

『まぁ日記って言うのは過去を記すものなので。これは妹さんが亡くなった日の日記でしょうね』


“…溺れた、そうだ。海に”

“しかも夜中の2時だぞ?おかしいだろ、ココに来るなんて。誰かの陰謀じゃないの 

か?”

“どうだろうな、しかし夜中の2時とも言えば、水温が-2度のハズだぞ。そこに溺れちまえばいくら泳げても、岸にたどり着く前に低体温症で死んじまう”


『え、つまり海に落ちたと。-2って真冬?』

『ちゃんと日記に書いてありますよ、4/12って。春にも関わらず寒いのなら…南半球ではないでしょうか』


・出た、ツバキゅんの光る知識[\2400:シラクス、さんから]

・-2度って冷たすぎんだろ、低体温症で死ぬの納得。しかも真冬だもんな

・無慈悲過ぎったって、死因がよぉ……![\5160:テイル、さんから]


「えぇ、低体温症ってキツイよぉ…!」


配信で写されているゲームの画面を見ながら、花鈴はうう、とうなる。


『ふんふん。…ええ、次は三女かよぉ。』

『これは…〇り魔みたいですね』

『長女が事故で入院中にそりゃないって。鬼畜やん』


・鬼畜だもの[\1000:レイワちゃん、さんから]

・これがこのゲームの特性だからね(笑)


『マジないってそれはよぉ…、あ、ここから日記白紙じゃん』

『そうですね、最終ページまで一応見て見ましょう』


ツバキに言われ、月は配信しているPCのエンターキーを押しながら日記をめくって

いく。


『何もないね』

『普通なら何かあるところなんですけどね』


・さすがツバさん。わかってらっしゃる

・大体ホラゲーだと紙類は最後のぺージに発狂ものが書いてある

・今回は白紙やね。


『え、でも、なんかまたイベント始まったんだけども』

『これは……』


「えっ」


・ええ、妹達やん?!

・なるほど、霊か……

・これ、TRUEなのでは?[\5600:ヤミヤミ、さんから]

・ありうる[\30000:テイル、さんから]


“お姉ちゃんが、ずっと悲しそうな顔してたから心配で……”

“戻ってきちゃったってワケ”


『優しい妹じゃないですか』

『いや、これ戻ってこれるんかい』


・それは禁句

・言っちゃアカンやつ

・童話とかそういうのには違和感を感じても触れちゃいけないんだぜ…[\30000:ツッ 

 キー、さんから]


画面では三姉妹が喋っている様子が映っている。


『いやー、会話が和みますわ』

『そうですね、過去と同じように三人で喋ってます』

『ふんふん。…ぅえっ?!選択肢出て来た!!』


・来たぞ、分岐だ

・“お姉ちゃんに選んでほしい”って…これもう分岐やん

・リンがどっちの選択をするかで妹達の行動が変わるんですねわかります


『うええ…、“一緒にいて欲しい”か“私はもう大丈夫”か?これどっち行ったらHAPPYいけるんだろ』

『TUREは真実という意味なので“本当のエンド”、HAPPYは幸せという意味なので“主人公にとっての幸せなエンド”ではないでしょうか』


・さすがカンニキ

・さえてる。ゲームプレイヤー尊敬するわ

・でもそれなら“一緒にいてほしい”を選ぶのが妥当じゃね?今のリンは妹達を失った

 のが悲しすぎて精神消耗してるわけだし。妹達が戻ってきたら主人公にとっては幸

 せだと思う。誰だってそーだろうけど。


『あー、じゃあよし、リスナーもそう言ってるし“一緒にいてほしい”でいいや!』


そう言うと月は迷うことなくエンターキーを押した。



“………そう、そっか”

“やっぱり姉さんは私達がいないとだめだよねーー”

“…ティナ、うるさい”

“あぁん?!んだとせっかく一緒にいてやるっつーのに!”

“あわわ、落ち着いて……!”


そう言って三人仲良く、楽しそうに会話するシーンが流れ、暗転した。そして……。


[HAPPYEND:キオクが遺る部屋]


『こっわ、ナニコレエコワーイ』

『ヤバイですねこれは……。』


画像ではEND名と共に、涙を流しながら笑い、虚空に話しかけているリンの

イラストが現れる。まるで“何か”に依存しているような絵だ。


『はい、じゃあ…最後はTRUEだよね?セーブ14まで使っちゃったし、そこから飛べば一発だぜ』

『ですね、もう終わっちゃいますが』

『私は終わって嬉しい…じゃあ、ばいばーい』


・ばいばーい

・乙

・お疲れ様です![\4000:推しの供給、さんから]


暗くなった配信画面の隣で、コメント欄にお疲れコメが流れていく。花鈴はそれを

しばらく眺めた後、スマホを切った。


「(明日見れるENDはどんなんだろう……)」


リスナーの言う通りもし神ゲーだったのなら自分でやってみるのもありかな、

なんて思いながら、花鈴は部屋の電気も消し、眠った。

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