#21 本番前です!
「海里ちゃ~ん……。」
コラボ配信、当日。開催されたのは、 四月が終わってからの
日曜日の次の日からGWだったため、実質五連休だ。二期生は四人いるため、
今日一日運営側からの出し物(というかほぼ自己紹介だけ)を消費し、残りの四日を
先輩によるイベントで盛り上げる…というもの。
『はいはい、しっかしりして。ちゃんと配信見ててあげるから』
「うぅ、緊張する…。炎上とかしちゃったらどうしよう」
『悪いことさえ言わなければ大丈夫よ。現に月だって炎上したことないもの』
「あれは、アンチとかいたら速攻リスナーによって潰されてるだけで……。」
自室にて。緊張が抑えられない花鈴は、海里に電話をしていた。机に置いている
PCの画面には、叶希がいる。そしてスマホには、通話マークと共に
“しばらくお待ちください”と書かれた、公式ライブ配信画面が表示されている。
・いよいよだぞ…
・貢ぐ用意は出来ている(スッ)
・この日のために金欠を防いできたんだ!
・新たな推しを求めて来ました![\30000:ランダム、さんから]
・推しを求めて三千里
・俺らはつねに三千里
・そこw一句詠むなやwww
・三期生どんな子だろ。この前のPVでイラストは見たけど、性格とか個性とか、気
になるよなぁ[\2000:推しの推しの推しは推し、さんから]
その横ではズラーッと、コメントが流れて行っていた。
『第一、そんなことで緊張してちゃダメだって。“世界一のVtuber”、なるんでしょう?だったらリラックス。はい息吸ってー、吐いてー』
「すぅ……、はぁ~~~」
海里になぐさめられながら、花鈴は配信が始めるのを待つ。
『きっとアンタの言う愛とかユイも、同じ思いしてるって。だから落ち着いて』
「うん…ありがとう。私、頑張る!」
『うんうん、良いカンジね。…じゃ、切るわよ』
そう言うと、花鈴のスマホから通話の切れる音がする。それと同時に、NYAINから
メールが届いた。三期生のグループチャットからだ。ここにはお知らせをするために
金華も入っており、「準備はいいかい?」という文字だった。
『オッケー!』
『大丈夫です!』
『うん』
『いつでもいいよ』
『はやく始めるのですわ!』
と、すぐさま返信が来る。花鈴も返信すると、配信画面に変化があった。
画面にはPVが映っている。
“{flowerアレジメント}による、待ちに待った三期生!”
“一期生と二期生の希望を引き継ぐ、次なる世代の新星は―…?”
その言葉が、黒に近い紺色を背景に、白い文字で流れていく。そして三期生の
イラストが紹介された。
“三期生”
アジュガ担当:
アルストロメリア担当:百合園スイ
カモミール担当:乙葉叶希
シロツメクサ担当:
ストレリチア担当:
フウセンカズラ担当:空風緑
順番ずつイラストが出ていく。愛とユイのVtuber名は知っていたので、イラストを
見て驚いた。二人共やっぱり、とても可愛い。そして、自分のイラストが映っている
のを見れば、改めて感動した。他の三人は、この三つのイラストのどれなんだろう。
PVが終わると、配信画面に全員のイラストが映った。と言っても、黒い線で
仕切られ、そこの一枠ずつに六人が載っている。六つある枠のうち、叶希は右上だ。
花鈴が動くと、叶希も動いた。よし、ちゃんとソフトが起動している。
すると枠が動いて、真ん中に小さめの枠が出来た。そしてそこに少年姿のイラストが
入ってくる。その少年は茶色の髪にサングラスをしていた。誰なのか察した
花鈴は目を丸くし、コメント欄でも驚きの声が上がっている。少年はにこっと
笑った後、声を発した。
「
グラさん、ヒマグラさん!一期生のヒマ・ヒマワリでぇ~~~っす!!!」
なんと、一期生のヒマが入って来たのだ。まだマイクを入れていないため、花鈴は
驚きの声を自室であげる。両親は娘の声を聞いて何事かと思ったが、今日は娘の
晴れ舞台。入ってはいけないと、部屋の前を通り過ぎるだけにした。
「いやーね、始まってまいりましたけども。あ、三期生のみなさんはまだマイク入れないでくださいよー。今日はこのボク、ヒマさんが司会を務めさせていただきます!!」
・うせやん(迫真)
・え、え?一期生が出てくるなんて[\5000:推しの供給、さんから]
・どーしたんすかヒマさん。今日は珍しく休み?
・いやいや、一期生はつねに忙しいって。ハリウッドなみの忙しさなんだだよ?どう
したの[テイル、さんから]
「ははは!やっぱりみんなビックリしちゃう?サプラーイズ!!…っとと、話をもどいて……。実はちょうどボクの予定が開いててね。二期生のみんなは今回、イベントの用意で忙しいし!そこで、ボクが出て来ちゃいました~!」
前回の二期生発表によるイベントは、二期生と公式全員で回していた。しかし今回は
ヒマの予定が開いていたことで、急遽運営が司会をお願いしたという。
「イエーイ、三期生のみんな、そろそろだよー!ささ、マイクの準備して!!」
「え、あ、…!」
ピースをしながら画面の向こうの三期生全員に告げるヒマに、花鈴は慌ててマイクを
入れるスタンバイをした。
「よしよし、全員スタンバったかな?あ、まだしゃべっちゃだめよー。さーて、ここに、“三期生発表会”を始めちゃいまーす!フゥーーーーーーー!!!!!」
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