#19 二期生の方です!
「愛ちゃん、ユイちゃん!久しぶり!!」
指定された日に{flowerアレジメント}へ向かい、花鈴は愛とユイに再会した。
「PV、見たわよ。二人共可愛いじゃない」
「愛ちゃんのも可愛かったよ!ポップってカンジ!!」
「お二人共とても素敵でした!!」
今回は会議室を使う。もちろん花鈴達は{flowerアレジメント}の構造を理解して
いないため、スタッフによる案内で来た。会議室は相談室のような内装で、強いて
言うならば、相談室と違い椅子や机が多く、スクリーンとテレビがある。そして、
再会して早々、キャッキャと三人で談笑する。前回出来なかった連絡交換は
もちろん忘れない。
「いいねぇ、ワカい子は」
「ふん、年下は楽観的でいいですわね」
「楽しきことはイイことだよ」
はっは、と白い椅子に座って花鈴達を眺める蒼汰の横で、彩は鼻で笑う。それを
蒼汰が再び笑いながら返事をし、二人で会話を始めた。凛はというと、一人椅子に
座ってPCをいじっている。
「はいはい、おしゃべりはそこまでだよ」
すると、会議室に入って来た金華がドアにもたれかかりながらそう言った。
「今日はコラボ配信についての説明と、モデルが動くかの確認だ。…とはいえ、配信については私がやるが、モデルについては日々動くかのチェックをしている人に頼んだ方が良いだろう。そこで、助っ人を呼んできた」
そう言うと金華はもたれかかっていた体を直し、ドアからずれる。すると、一人の
金髪少女が入って来た。
「初めまして」
「彼女はレイア・フローレス。二期生の
「アンジュ?アンジュですの?!」
一礼する金髪少女…レイアを金華が紹介すると、彩がガタ、と音を立てて白い椅子
から驚愕の表情で立ち上がった。
「うん、私がエーゼルランプ担当のアンジュ。まだ誕生日は来てないから16歳のアメリカ人。今はレイアと呼んでほしい」
「これは失礼いたしましたわ、レイアさん。」
先程までの高慢な姿勢から一転、彩はレイアに一礼する。どうやら彩はレイアの
ファンのようだ。
「私は今日、君達にモデルの動かし方、使い方を見せるために来た。“輝けるもの必ずしも金ならず”。もうすぐこのバーチャル界で輝く貴方達の相手が出来ること、心より感謝します」
そう言ってもう一度一礼するレイアを見て、彩は小声で「名言キタ!今のはシェイクスピアですわね」と興奮しながら言っている。レイアもといアンジュは、名言を言う
ことで有名だ。名言を用いた正論は、リスナー達に癒しをくれる。
「ということで、まずはモデルの使い方を覚えようか。君達。レイアの傍へ」
金華が手招きをし、花鈴達をレイアの傍まで来させる。すると、レイアは手に持って
いた白いPCを出し、開いた。画面には普段レイアが使っているアンジュの
2Dモデルが映っている。
「貴方達はすでにソフトを入れているはず。それを使って、こう…動かす。カメラは顔認証をして、そこから輪郭をソフトが動かすためだけにあるから、画質は必須じゃない。」
レイアはPCをいじりながら説明していく。
「…こうすれば、動くはず。」
「難しそう……」
「“何事も、成し遂げるまではいつも不可能に見える”。まずはやってみること」
説明を受け、ユイが不安そうな顔をするが、レイアが名言を使ってユイを慰める。
それを聞いたユイは頷いて、机に置いたPCを開く。すでに金華が2Dモデルを三期生
全員のPCに配っており、それとソフトを起動させた。
「これを、こうで…」
「ん-?動かないね」
「え、えと、まずは、これで、こうすればいいのかな」
そうやって各自、モデルが動くかを確認する。
「手こずってるね」
「愛ちゃん!もう大丈夫なの?」
「こういう系は強いから。全然バッチシよ」
グ、と親指を立ててウインクをしながら、愛は笑う。花鈴とユイは多少手こずって
いたものの、何とか動かすことに成功した。
「うん、いいね。皆難なく出来たようで安心だよ。」
「“努力なくして力なし”。“失敗なくして成功なし”。良いことです」
「はは、じゃあ、コラボ配信について説明するよ。これはライブ配信になるからね。三期生の発表だ、一期生・二期生のリスナー達が注目すること間違いなしだよ。配信は一日だけだし、この日だけは一期生も二期生も配信しないから、バーチャル界のすべても注目する。」
「ふぇぇ、思ってたよりも怖いです…!」
「ユイちゃん、“何事も、成し遂げるまでは不可能に見える”、だよ。頑張ろ!」
金華の説明を受けて首をすくませるユイを、花鈴はレイアが言っていた名言を
引用してなだめる。それにレイアは満足そうに頷いた。
「そうだね、緊張することも大事だけど、一番大事なのは“楽しむこと”だよ。思いっきり楽しめば、リスナー達も楽しんでくれるはず。その勢いで初のソロ配信をすれば。きっとファンも増えるよ」
「イイね!ボクたち全員でガンバる……。うん、モえてきた!」
「ふふふ、私がこの中で一番神々しく、崇めるにふさわしいことを気付かせてやりますわ!」
「“自分が他人に劣っていると思わせることは誰にもできないわ”。頑張って」
「うう!レイアさんに応援されましたわ、まだ始まったばかりですのに…。私の命もVtuberライフも終わりですわ……ウッ」
バタ、と倒れるように椅子に座りこむ彩。今のは相当効いたようだ。推しの応援は
高級品。いや、天啓に近いというかそのものだ。彩は胸を押さえて机につっぷして
おり、レイアは口元を左手で抑えて、あらま、というふうに首を傾げながら彩を
見ていた。
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