#8 ホラーゲームです!

『ん?あ、待って待って、外また出られない!!』



「キオクの眠る部屋」とは、ちまたで有名な「おしお。」さんが最初に作った

ゲームだ。現在はリメイク版のみが配信されており、過去にはなかった

エンディングシーンやキャラの立ち絵などがある。


“愛する妹二人を連続で失った姉であり主人公のリンが、心の傷に立ち向かうための

ストーリー”であり、トゥルーではものすごく希望が見える。…ただ、バッドと

ハッピーはある意味ホラーであり、そしてトゥルーに行くのは難しく、バッドに

行きやすいことから“鬼畜ゲーム”の異名を持つ。


『あぁ、後半は注意深く物を探してくださいね。』

『え、でも全部探したし…外出られるんかいっ』


ガチャガチャとせわしなくキーボードをたたいていた月だが、リンが出たのを見て

ホッとする。しかし、それにツバキはため息を吐き、リスナーは天を仰いだ。


“さぁ…燃やさなきゃ”

『ま?え?!』

“思い出を、消し去ろう。私の物だけ。妹以外の物だけ。私だけを――……”


[BADEND:キオクが燃えた部屋]


『はあーーーーーーーー』

『あーーーーーーーーーーーー-っ』


・ドンマイ月さん

・やっちまったな

・月さんも初手がBADかw

・奇遇だな俺もだ[\3000:はたはた、さんから]

・ツバさんのため息がwww


「あーあ、やっちゃったわね」

「みみみ海里ちゃん!これ怖い!!このENDイラスト怖い!!!」


BADENDのイラストは、笑いながら涙を流したリンが、燃えた部屋の中央に

たたずんでいるイラストだった。リンの容姿は黒くボサボサで長さが不規則な髪に、

目が黒く淀み、そのうちの右目と左手が包帯に巻かれた黒いワンピース姿だ。

そんな彼女が狂ったように泣き笑いしながら炎に包まれた部屋にたたずんでいる。


「ほら、落ち着きなさい、お茶飲んで」

「むぐ、むぐぐぐ」


怖さのあまり寿司ハンバーグを喉に詰まらせてしまった花鈴は、慌ててお茶を飲む。


『BAD、おめでとうございます』

『…わー、すっごい良い笑顔。』

『ちなみにこれ、「トゥルーが神」と呼ばれてるんですよ?興味ありません??』

『えぇ……。』


・まさか?

・まさかのまさか

・おっとっと

・[\3400:スパチャン、さんから]


『とゆーことで、「全END回収まで終われません?!ホラーゲ0-ムプレイ」をまた次回もやっていきましょー。』

『あぁ、配信が、配信がつぶれていく……』


・諦めれ[\2000:ロン、さんから]

・月ちゃん、頑張って…!

・配信予定がだだ崩れだなw

・ツバキゅんに逆らえるものはいない……。



「月さん、災難ね」

「これをあと2,3回ぐらい繰り返すんですよね?ハッピーの方もホラーって、これ絶対怖いやつです!いやだぁ……。」

「大丈夫よ、たかがゲームなんだから」

「日本には言霊なるものがあるんですう!やーーーーーー」


バクバクとはんばやけ食いのように食べる花鈴を諦めた顔であーあーと言うだけだ。

明日の顔合わせでお腹を良いが。


「花鈴、明日は大事な日でしょう?お腹を壊したら元も子もないわよ。それに

お祝い以外のところでもちゃんとお寿司を食べてあげさせるから。」


ひとしきり注文した寿司を食べ終わった花鈴は、フー、フーと息を整え、なんとか

落ち着くことができた。


「まぁまぁ…あと何か食べるものある?頼んであげるわよ」

「え、じゃあ…たまごと、えびと…タコ寿司あります?」

「ないわね。ここじゃなぜか限定品だもの……。」

「ないかぁ………。」


しょぼ、とする花鈴を見つつ、海里はパッドに新しい注文を入れていく。


「海里ちゃんは、オーディション受けなくてよかったの?」

「え?」

「海里ちゃんだって、Vtuberが、月ちゃんが好きなのに…。」


Vtuberを夢見てたのは花鈴だけじゃなく、海里もそうだった。中学からの親友で

ある二人は、よく一緒に動画を見ていたのだ。


「何度も言ってるじゃない。私は“音楽”の道に進みたい。作る側に。」

「Vtuberでもきっと、作る側になれるよ?」

「そうね。でもきっとそれは、Vtuberの仕事の一環、または趣味として扱われるもの。私は、“純粋な音楽家”でありたいのよ。」

「……そっか」


への字に眉を曲げて笑う海里だが、そこには確かに決意があった。




「ふぁー、お腹いっぱい!」

「妊婦みたいね、アナタ」


その後さらにいくつか注文をし、食べ、海里の奢りでの会計となった。寿司屋を

出て、今度はドーナツ屋に着く。


「アップルパイだけでいいの?」

「いいよ!海里ちゃんは?」

「私はアンジュクリームにしよっかな。久々に食べたくなってきたし。」

「そういえばこの前WorTubeでポントトングの作り方やってたよ」

「そのドーナツって作り方企業秘密じゃなかった?」

「わかんないけど、見た感じ結構わかりやすかったから、素人用の作り方だったりして」


寿司を食べ終わった後はドーナツの話題になりつつ店へ。花鈴はアップルパ二個、

海里はアンジュクリームを一個買い、帰路へ。


「じゃあね、花鈴」

「うん!ばいばい海里ちゃん。ありがとね、奢ってくれて」

「なんのこれしき!未来じゃ稼いでるアンタに今度は奢ってもらうからね」

「もちろんです!」


ドヤ、とした海里にドヤ顔で花鈴が返すと、おかしくなって、二人でふふふ、と笑い

合う。そして手を振った後海里が家に帰って行ったので、それを見送って、花鈴も

家へと入って行った。

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