#6 外食です!
「おーい、迎えに来たわよ~~~」
19時。玄関のインタホーン音が、海里の声と共に家中に響き渡る。
「はーい!今行くよーーー!!」
返事をし、慌ててスマホをベージュ色の肩掛けバッグに入れて扉を開ける。
「よし、寿司食べに行くわよ寿司」
「やったー!いっぱい頼んでいい?」
「ダメ…と言いたいけれど、今日は特別ね。お祝いよ!!」
「待ってましたー!」
キャイキャイと喋りながら家を出て、近くの寿司屋を目指す。徒歩15分ほど歩いて
着く寿司屋は、有名企業が運営している、回転寿司「そう寿司」だ。名前の由来は
「倉庫」らしい。何故だろう。
「わー、混んでるわね」
「いつもだからしょうがないよー」
自動ドアを潜って入れば、ざわざわとした雑音が店内に響き渡っている。
「とりあえずテーブルで良い?」
「もちろん」
花鈴は海里に了承を得ると、予約機まで行き、受付番号の書かれた紙を持って、
海里の場所まで戻って来た。
「何食べよっかなー♪マグロといくらは必須、サーモンのあのとろみのある脂に久しぶりにかぶりつきたいし、中トロの甘さも見捨てられない!えぴといかの感触マッチもなぁ……」
「貴方本当に寿司が好きね」
「好きだよ!二番目に!!」
「そうね。貴方の一番好きなの物はアップルパイだもの。…帰りに寄る?」
「寄っちゃう寄っちゃう!2個食べる!!」
この近くでは、アップルパイはドーナツ屋の「ミスドーナツ」に売っている。
略すとあの有名企業になってしまうため正式名称を最後まで言うのがお決まりだ。
『受付番号320番の方、カウンターまでお越しください』
「あ、私達の番だよ、海里ちゃん!」
「はいはい慌てないで―」
海里の腕をグイグイと引っ張って、カウンターへと行く。男性店員さんに紙を差し
出すと、にこやかに笑ってテーブル指定席の書かれた紙をくれた。
「ふんふん、46番ね、りょーかい」
「あ、私お水取ってくるね!」
「ん、ありがとー」
海里と一旦別れ、自身は水を取りに行く。そういえばそろそろ月ちゃんの配信だな、
なんて思いながら水をコップに入れる。
「おまたせ!」
「お、さんきゅ。マグロといくらは頼んどいたよ」
「さっすが海里ちゃん!頼りになるなる!」
水の入ったコップを受け取った海里は、お茶用のコップに“緑茶の粉末”を入れた後、
お湯を入れて、そこに冷ましとして水を入れた。
「うに頼もうかな、私は」
「私サーモンと中トロ食べる!」
「あ、じゃあイカとえび食べちゃお」
「私も!!」
『ご注文の品がまもなくココに着きます。お取り忘れに、ご注意ください』
壁についているパッドで注文をいくつかしていればパッ、と画面が切り替わり、白い
背景に漁師が魚を釣っている絵になった。そして上部には
「まぐろ:2皿」「いくら:2皿」と書かれており、ウィーンと、パッドの下部にある
壁から待ちに待った物が出て来た。
「わーい、いただきまーす!!」
「いただきます」
壁の中にはレールがあり、そこから各テーブルから頼まれた物を届けている。注文の
物を載せて出てくる台は測量計になっており、重さを感じ取るのだが、その重さが
0gになると、シュッと戻っていくシステムだ。
「あ、そうだ海里ちゃん。月ちゃんもうすぐ配信始めるけど、見る?」
「寿司屋で見ていいのかしら……」
「お金払ってるしちゃんと食べてるから大丈夫…だと信じたい」
そう言いながら花鈴はイヤホンをスマホに差し、片耳ずつつけて配信を待つ。二人は
隣同士で座っているのだが、向こう側には荷物が置いてある。
『へーい、こんばんはー。桜羽月でーす』
・待ってました!
・今週も頑張れる[\5000:推しの供給、さんから]
・なんかテンション低くね?
・ほんまや
・ニキさすが
『あ、気付かれた?いや…ちょっとね、ウン』
『月さんは今日、ホラーゲームなるものをやるんですよー』
・?!
・この声は!
・まさか予告なしの?[\10000:推しの推しの推しは推し、さんから]
「え、え?!」
「ホントよ、予告なんてどこにも……」
花鈴や海里はもちろん、リスナー達も困惑する。月のSuifishアカウントには、
「配信です!」のみで、何の予告もなかった。つまり――ファンへのサプライズだ。
『皆さんこんばんは、一期生のゲーム専門Vtuberのカンツバキです』
・嘘でしょ?!
・?!
・嘘だろ…
・このようなサプライズがあろうか
・ああああああああああああ[\30000:発狂末の尊死、さんから]
・発狂ニキ落ち着いて
・ありがとう。この世に悔いなし[\30000:はたき、さんから]
・生きれ
・おい両リスナー生きてるか?w
・あぁ、あああああ……
・え?は…え?あ…え?
・ダメだ、皆の語彙力がいとも簡単に破壊されていく…。
・俺らも終わりか、くそっ……
『…ツバキ、終わったよ、ここのチャンネル。リスナー全滅チャンネル終了のお知らせだよ』
『あれれ、なんかヤバイですねー』
『アンタがコラボしようなんて言うから……。』
・ツバキゅんからのお誘いだったんですか?!
・新たなるビッグニュース感謝だぜ、カンニキ…。
・ツバくん、どうしたのコラボなんて
・ホラーゲーム…ツバキ…あ、納得(笑)
・ツバカンのコラボお誘いなんてヤバイじゃないすか[\20000:カタカタ、さんから]
予告なし!月の配信は瞬く間にリスナー達に広がり、全員の思考を止めたそうな。
「花鈴、生きてる?箸口に入れたまま止まってるけど。」
「
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