#12 名前と担当花が決定です!
「…え~~っと、雪野、ルカ、千鶴さん達は俺が担当だから呼びに来たんだ。」
守はいたたまれないように頬を掻きながら三人を呼ぶ。待機室のドアを開けたまま
で、そこから三人に来るよう促す。
「ああ、私の愛しい2Dモデルがついに出来るのね!見る者すべてを惹くようなものがいいわ!」
「千鶴ちゃんはスゴイねー、オレはどんなのがイイかゼンゼン決めてないやーー」
高らかに笑いながら彩は待機室から出ていき、その後を蒼汰と凛がついていく。
そして、ドアは閉められた。
「大丈夫?花鈴……」
「え、あ、大丈夫です!」
「花鈴ちゃん……。」
しょぼ、とする花鈴を、愛とユイが慌ててなぐさめる。
「あぁ言われるの、オーディションのときも覚悟してましたから……」
「言い方は悪いけど、夢は叶わなくても見られるものなのよ!なのにあんな……。」
「うん、理想は大きくていいんだよ」
背中をなでなでしながら、プンプンと愛は待機室のドアの向こうに行った凛へ文句を
言いまくり、ユイはそれを援護してする。
「ありがとう、愛ちゃん、ユイちゃん。」
「もー、ほんっとアイツなんなのーー!」
「わー、愛ちゃん暴れないで―――っ」
二人のおかげで傷ついた姿勢から落ち着くことは出来たものの、愛は当然怒りが
おさまるはずもなく、ムキーッと足をだんだんさせた。
「はーいアンタ達、出番よー」
「あ、花芽さん」
ガチャ、とドアが開いて、今度は掬が姿を現した。そして守のように待機室から出る
ことを促す。
「あ、このお菓子って……」
「良いのよ、そのままで。後で二期生達が集まるだろうし。ほら、はやくはやく」
「はーい」
「あわわ、」
「あ、待って置いてかないでーー」
愛が一番先に待機室から出、その後を慌てて花鈴とユイが追いかける。全員が
待機室を出ると掬は静かにドアを閉めて、社長室まで行くように案内してくれた。
「あぁ、おかえり。」
社長室へと戻ると、椅子に座り、書類を並べていた金華が手を振った。
「で、社長。花はどうするんですか?」
「花……」
2Dモデルを作ると同時にモチーフとなる花を決めなければならない。掬が腰に手を
あてながら、金華に尋ねた。金華は書類を脇に置くと、頷いた。
「もちろん決めてあるよ。ほれ」
そう言うと金華は掬に、何か書かれた白い紙を三枚渡した。それを受け取った掬は
その紙に目を通すと金華に一礼する。
「確かに受け取りました。ほらアンタ達、行くわよ」
「え、どこに……」
「相談室。そこで伝えるから、はやく着いてきて」
「は、はい!」
スタスタと先に行ってしまう掬だが、今度は社長室の入り口のドアを開けた。
廊下には一昨日の青い椅子がそのままで置かれており、所々に自動販売機がある。
相談室は社長室の廊下をしばらく真っ直ぐ行き、左に曲がった所にあった。
「入って」
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します!」
「失礼します…?」
ドアを開けて待っててくれている掬に申し訳なく思いつつも、三人は相談室へと
入る。中は白が基調とされていて、白い椅子二つと机一つのみだった。
菊は机の傍まで来ると、三人に来るよう手招きする。
「はい、これが貴女達のVtuberとしての名前よ。」
そう言うと掬は三枚の紙をそれぞれに手渡す。一体どんな名前だろう。そう思って、
三人は紙を見た。
「
花鈴は思わず、そう呟いた。自身のVtuberとしての名前は、乙葉叶希。カモミールと
いう花を担当するVtuberだ。
「
「
「“逆境に立ち向かう、逆境で生まれる力”って……!」
オーディションの時、花鈴は逆境についてを金華と話した。きっとそれを覚えて
くれていて、これが似合うと金華が選んでくれたのだろう。
「気に入った?名前と担当花が決まったから、あとは2Dモデルだけなの。完成したらWorTubeで三期生発表PVが出るはずよ。その後初めての配信ね」
「やった、愛ちゃん、ユリちゃん!ついに私達、憧れのVtuberだよ!!」
「はい、とても楽しみです!!」
「んー、はやく来ないかしら、PV!配信がしたいわ!!」
嬉しさの余り三人ではしゃぐ。それをジッと見ていた掬はニコッと笑った。
「嬉しそうで何より。私が腕になによりをかけて頑張って書くから、楽しみにしててね」
「はい!ありがとうございます!!」
「フウセンカズラだからやっぱりバルーン要素があるのかしら?」
「アルストロメリアはハイビスカスに似ていると聞いたことがあります!夏のイメージかもしれないです!!」
そうして三人は白い紙を大事に持って、もうすぐ対面するVtuberとしての自分を
心待ちにした。
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