第17話 死者



 パスカルの話を聞いて思った。


 死んだ者達がいる世界。


 そんなものが実在するというのなら、ここは――死者の世界という事になる。


 ミレイやパスカルは死んだのだろうか。


 それで、死者の世界にやってきたのだろうか。


 今まではただ記憶喪失なだけだと思っていた。


 故郷がどこかにあって、いずれはそこに帰る日も来るのだと思っていた。


 しかし、そうはできないのだとしたら?


 生者だと思っていた自分が死者だった。


 それが分かった時にミレイは、どう考えていいのか分からなくなっていた。


 そんな中、輪廻の扉が開かれるという噂が耳に届いた。


 ルルに聞くと、輪廻の扉は死者が再び生者へなるためのものらしい。


 魂はそうやって巡りに巡るのだという。


 その時がきたら、ミコト村の上に出現するのだとか。


 それを聞いたミレイは、不安な気持ちになった。


 記憶の中の生者の世界は戦いばかりだった。


 その戦いは辛い事ばかりだったように感じられる。


 ミレイは戻りたいと思っていた。


 けれど他の人にとってはそうでないはずだ。


 だから。


 人々が嬉しそうに噂をする理由が分からなかった。


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