第16話 巫女の傍つき



 それから。


 神殿に住む事になったパスカルは、巫女の傍でお世話をすることになったらしい。


 薬草をたまに持っていくと、巫女の周りをうろちょろしていた。


 パスカルは、あまり器用ではないらしい。


 掃除のバケツを蹴飛ばしたり、モップを壊したり。


 よく仕事で失敗してしまうと言っていたため、小さなことから雑用をこなしているそうだ。


 そんなパスカルは、泉で倒れた時に怪我をしたらしかった。


 そのためミレイが数日間、傷薬を運ぶことになった。


 持っていったのは、倒れた時にできたらしい、頭のきずに効く薬だ。


「ミレイさんはここに来る前の記憶はあるの?」


 ミレイはパスカルに、自分の記憶について時々話した。


 すると、パスカルは少しずつ記憶を思い出していったらしい。


 彼女にも、何か大きな戦いに挑む記憶があったようだ。


「死者の国を守る戦いだったと思う。死んだ後の世界が脅かされるから、みんなでご先祖様達の世界を守ろうって」


 パスカルが言うには、生者の国と死者の国、二つの世界が無事でいないといけないという話だ


 そう戦前に教えられていて、戦っていたらしい。


 そうでないと世界のバランスが壊れてしまうとか。


 けれど、今のパスカルにとっては他人事のようだった。


「もう私には関係ない事かな。なんだか不思議だけど、すっきりした気持ちなの」


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