第23話 命と人生



 空を見つめながら、パスカルは続ける。


 視線の先では、多くの人達が順番に扉の向こうに消えていった。


「だから彼等はただ成仏しただけなんだと思います」


 ミレイは、少しだけ過去を思った。


 いつかの戦場で考えていた事を。


 次があると言う考えは傲慢なのかもしれない。


 また生きなおせると思うから、彼等の最後が嫌なのだと思うのだろう。


 あの頃のミレイは、命に続きがあると、そうだと思いこんでいた。自分の一つしかない命を大事にしていたなかった。


 だから死んだのかもしれない。


「巫女様から聞いたんです。あした、記憶の柱を見に行ってみれば分かる事があると」


 ミレイの視線の先で、ベリルが扉の先へ消えていくところだった。


 彼女も転生するらしかった。


 寂しくなるなと思った。


 別れがあると知っていれば、何か言えたかもしれない。


 明日も、今度も、次も会えると思っていたから。


 こんな日が来ることを思いもしなかった。


 ミレイは、後悔していた。


 それは、激しく胸を貫く痛みだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る