第24話 命も人生も一つ



 その日の夜は夢を見なかった。


 ただ、こんこんと深い眠りだけがあった。


 翌日、起きたミレイはルルに話をして、記憶の柱を見に行った。


 記憶の柱は変わらずに建っていたが、心なしか数が少なくなっているように見えた。


 柱をのぞきこむと。色々な人達の新しい生が見えた。


 生まれ変わった村人たちが、小さな子供になって両親と笑っている姿や、友達と遊んでいる姿などがあった。


 それらの映像が見えた後、柱はすぐに砕けてしまった。


 その中の柱には、ベリルの柱もあった。


 けれど、彼女はまるで別人のようだった。


 どこかのお嬢様みたいな姿で、裕福な暮らしの中、蝶よ花よと大切に育てられていた。


 命は一つだった。


 地続きなのではなかった。


 人生も一回きりだった。


 死んだらそこで終わってしまう。


 ミレイは、ここで新しい生を授かったのだと、その時に気が付いた。


 自分はもはや、あの時の人間とは別人になってしまったのだ。


 ここに住む者達が記憶をなくすのは、失ったからじゃなくて、別人として生きるべきだったからではないかと思った。


 人が死んでも消えないのは罪だけなのだと知った。


 罪だけは、悲しい事にいつまでも残り続ける。


 形をかえて、姿をかえて、同じ人ではなく、被害者も加害者も枠を飛び越えて、別の誰かに残ってしまうのが罪なのだと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る