本編

第1話 羽は魂、蝶は記憶



 蝶がはばたく


 かつて火の粉を纏い数多の戦場をかけてた蝶は、ぼろぼろになった羽を動かしながら、あてもなくはばたいていた。


 蝶は疲れ切っていた。


 あともう少し、蝶が飛び続けていたなら、瞬く間に力尽き落下していただろう。


 蝶の下に控えている、底なしの時の狭間の中に。


 けれど蝶は、羽を休める場所へと辿りつくことができた。


 それは、時の狭間にひっそりと存在する世界。


 遠い昔、ほんとうに存在していた楽園の欠片を集めてできた、小さな小さな楽園。


 優しくて、温かいだけの、幸せな世界。


 蝶はその楽園へ羽をやすめるだろう。


 ぼろぼろになった羽はすべて失われてしまったから、もう飛べやしない。


 そのかわりに、安息を手に入れる事ができた。


 羽のかけらはおくれて、その世界へたどりつく。


 そして……。


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